共通の基盤づくりでコストを削減
アークスグループの各事業会社の社長がアークスの取締役もしくは執行役員を務め、事業会社の会長もしくは相談役に横山社長が付く。各社の経営判断は2段階で取り組む。小規模な店舗改装などの投資はグループ各社が独自に判断し、実行する権限を与える一方、金額が大きい店舗改装や新規出店、閉店、役員人事などの重要事項は、各社の取締役会で決めた上で、アークスの取締役会に諮って決議する。各社ともある程度の独立性は保ちつつも、重要な決定事項はアークスが決裁権を握る体制をとっている。
各社の役員が一堂に会してグループ全体の重要事項を話し合う「グループ経営会議」も定期的に開いている。グループ経営会議とアークス取締役会の出席メンバーは同じだが、毎月初めに開くグループ経営会議では各事業会社が売上状況を報告。アークス取締役会は毎月中旬に開催し、各事業会社が利益の状況を報告する。経営を相互にチェックしつつ、20を超えるグループ横断の委員会やプロジェクトも含めて活発に議論できる環境を整えている。
2019年10月には約150億円以上を投じ、大手の欧米小売業をクライアントに持つドイツのソフトウエア企業SAPの新基幹システムを全面稼働した。グループ共通の基盤として、購買データをはじめとした経営情報の分析や間接業務の標準化・集約化などに活用し、グループシナジーの創出やコスト削減につなげている。
再編=スケールの拡大ではない
M&Aによる業界再編では、バイングパワーの発揮を掲げ、グループ入りした企業の組織を大幅に入れ替えて営業や店舗運営も含むすべての部門を中央集権化することは珍しくない。グループ経営の効率化では確かに有効だが、地域に適した営業や店舗運営のノウハウなどが失われてしまう欠点もある。かつてのGMS(総合スーパー)企業の失敗の歴史がそれを証明する。
横山社長は「再編が企業統合によって、ただスケールが大きくなることとイコールだとすれば全くの間違い。自分たちがいま持っている店、組織、人を集めて小売という業態のなかで未来投資しながらメシが食えるかどうか、在来型のやり方でできないとすればどんな方法があるかだ。変化の対応ではなく変化の真っただ中でいかにしっかり自分流に泳いでいくか。一番確かなことは自主自立をなんとか保ち、いまの状況での勝ち組同士が手を結んでもっとしっかりした経営の技を磨いていくことだ」と言い切る。