モナカやクッキーでなく「タコス」がヒントに

ある時、開発担当者がたまたま訪れたメキシコ料理店で食べたタコスが、偶然の出会いとなった。タコスは、肉や野菜などの具を、トウモロコシから作るトルティーヤと呼ばれる薄焼きパンで挟んで食べるメキシコの国民食である。タコスを食べた開発担当者の「タコスのようなサクサク食感をアイスに組み合わせることはできないか」という発想から商品開発が進められた。

3つ並んだタコス
写真=iStock.com/bhofack2
※写真はイメージです

これまでもモナカやクッキーでアイスを挟んだり、つつんだりするものはあったが、どれもアイスが溶けてくるにつれて湿気ってしまい、サクサク食感が持続しないものだった。それに対して、アイスとタコスを組み合わせる新発想で、食べ始めてから食べ終わるまで、ずっとサクサク食感を楽しめる新しいアイスの実現が目指された。最初は、タコスの形状をそのまま再現する試作品を開発してみたというが、不安定で、なかなか上手くいかずに断念した。

サクサク食感を徹底的に追及

そこで考案されたのが、アイスとコーティング、それを挟むウエハースという3層構造である。アイスのなめらかな味わいを際立たせるため、チョコレートコーティングは約1ミリの厚さでパリパリ食感にこだわって開発された。コーティングは、アイスの水分がウエハースに吸収されないように壁となる役割も担っている。だから、アイスが溶けてきても、その水分でウエハースが湿気ることなく、ウエハースのサクサク食感がずっと楽しめる。また、ウエハースは独特のサクサク食感のため、素材選び、原料の配合率、硬さ、焼き上げる温度などを徹底的に追及した。

「新しいアイス」としてこだわり抜いた開発を経て、7年越しで実現されたクリスピーサンドは、2001年の発売開始後、すぐに人気を集め、生産が追いつかなくなって一時販売休止するほどの大ヒット商品となった。それから20年間の累計販売数は5億個を突破しており、日本だけでなく、世界でも人気の定番ヒット商品になっている。