中ロ両国はかつてない緊密な関係に

【佐藤】岸田総理がキーウに入らないのはそれなりの思惑があってのこと――国際政局の表裏に通じる欧米の外交専門家はそう思っていた節があります。しかし、結局、“バスに乗り遅れた”だけというのでは様になりません。だから岸田総理は3月21日に電撃的にキーウを訪問し、ゼレンスキー大統領と会談したのでしょう。

手嶋龍一・佐藤優『ウクライナ戦争の嘘 米露中北の打算・野望・本音』(中公新書ラクレ)

【手嶋】総理の身辺警護を定めた法律がなく問題だという指摘もありました。米国のシークレット・サービスを永く取材してきた経験から言えば、“必要は法律を超越する”のです。米大統領の身辺警護だって、建前をいえば訪問国の警察の担当です。ですが、米国は大統領専用車を送り込み、武装したシークレット・サービスがすべてを取り仕切り、相手国に警備を委ねたりはしません。日本も自前でSPが警備すればいい。要は覚悟と訓練の問題です。

【佐藤】いずれにせよ、ゼレンスキー政権は、西側からの戦費と武器を支えに、奪われたすべての領土を奪還する――と少しも譲る気配はない。西側陣営はこうしたゼレンスキーの主張を全面的に支持しており、いまやロシアとウクライナの溝は一層深まっています。

【手嶋】停戦の機は遠のいているように見えますね。

【佐藤】ロシアはウクライナ戦域で米国と“間接戦争”を戦い、中国は台湾危機で米国と対立を深めています。中ロ両国は、米国を共通の敵として、かつてない緊密な戦略的パートナーとなりつつあります。

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