「多様化」は男性も女性も幸せにする
――誰もがジェンダーにとらわれず、生きたいように生きられる社会が最も豊かで民主的な社会だとすれば、日本は、女性にとってはもちろん、男性にとっても、そうなっていません。
まさにそのとおりだと思います。男性もジェンダー的プレッシャーにさらされ、社会から求められる期待に応えなければなりません。
そうした問題に対処する唯一の道は「多様化」です。性別やジェンダーを含め、さまざまな人々を温かく受け入れることです。そうすれば、女性らしさや男性らしさなど、ジェンダー的モデルに伴うプレッシャーが自然になくなっていきます。
ジェンダーだけではありません。「成功」や「幸せ」の尺度とは何かといった問題の多様化も、人々のプレッシャーを軽くします。あらゆる問題のカギは「多様性」にあります。男性にとって重要なのは、権力を手放すことに不安を感じないようにすることです。
多くの男性は、コロナ禍でバーンアウト(燃え尽き症候群)に陥るなど、自分たちが計り知れない負担を強いられていることに気づいたはずです。日本では長年、過労死も問題になってきました。男性の負担という意味では、(欧米より)はるかに長い歴史があります。
だからこそ、「多様化」が非常に重要なのです。女性に門戸を広げるようなプログラムを導入する企業のリーダーは、日本国外で研修やプロとしての経験を積んだ人であることが多いとも聞きます。そうしたリーダーが、日本企業に変革のきっかけをもたらすかもしれません。すでに外国で実施されているモデルを導入するのも一手です。
男性がほんの少し権力を手放すことになるとしても、最終的には、多様化で誰もが幸せになります。異なる人々からさまざまなアイデアやトピックが生まれることで、企業が豊かになるからです。
女性が「結婚しない」「子供を産まない」戦略を取る理由
――世界の国々の男女平等レベルを示したランキングで日本女性の地位の低さが報じられると、「日本は女性にとって良い国だ!」と反論する男性もいます。女性にとって生きやすい国かどうかを決めるのは女性自身であって、男性ではないのですが……。そうした男性の反論には、どのように対応すべきでしょうか。女性にとって最も賢明な戦略は?
ケース・バイ・ケースですね。仮に私がそう言われたら、その男性にこう切り返します。「昨日、家族のためにどのくらいの時間を割きましたか。女性がどのくらいの時間を割いているか、知っていますか」と。
でも、日本女性はもう行動によって、そうした男性に対処する戦略を実行していると思います。「結婚しない」「子供を産まない」という選択です。それが意図的な「戦略」でないとしても、結婚や出産・育児をもう我慢してまでやろうとは考えない女性が増えているということです。
私自身、コロナ禍で在宅勤務が始まった時、自宅で大学の授業も家事も何もかもをやらなければならないという状況に押しつぶされそうになりました。週末、自宅を離れ、息抜きしたことを覚えています。これは女性におすすめです。
戦略としては、「誰が家族の面倒を見ているのか」「誰が『見えざる労働』をしているのか」といったことを男性に問い返すのが効果的です。