なぜ日本の男女格差は世界最悪レベルにあるのか。カリフォルニア大学サンタバーバラ校のサビーネ・フリューシュトゥック教授は、「日本の男性が『文化』を言い訳に『男の特権』を手放さずにいることが一因だ」という――。(第2回/全2回)(取材・文=NY在住ジャーナリスト・肥田美佐子)
家事をする女性
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「稼ぐ」というタスクは男性だけのものではない

――日本では依然として、一家の主要な稼ぎ手は男性です。時代が変わっても、男性には、「お金を稼がなければ」というプレッシャーがのしかかっています。一方で、家族を養うだけの収入を得られない男性も増えています。日本の男性がそうしたジェンダー的プレッシャーから逃れるには、どうすればいいのでしょうか。

サビーネ・フリューシュトゥック教授
サビーネ・フリューシュトゥック教授(Photo by Denise Malone)

非常に難しい問題だけに、多面的なアプローチが必要です。まず、男性が1人で家計を支えなくてもいいという考え方を受け入れてくれるパートナーを探す必要があります。稼ぐというタスクを共有してくれるパートナーです。

次に、企業の役割も大切です。男性の重荷を取り除くには、企業が、男性も女性も同じように家計を支えることができるんだ、というメッセージを発する必要があります。

そもそも、1人の収入で家計をまかなえるような社会を有しているのは、一部の資本主義経済の国々にすぎません。もはや家計を単独で支えられる時代ではなく、それをパートナーに強いたりパートナーから強いられたりすべきではない、と認識する必要があります。

つまり、生活費を稼ぐことは両者が負うべき責任であり、ひいては他の世帯員も共有すべきことだという理解が必要です。そうすれば、(家事や育児など)仕事以外の世界で共有することも増え、男性も女性も自由を手にできます。

「男性の特権」を手放す

ただし、そのトレードオフ(二律背反)として、男性としての特権をいくらか手放す必要があります。例えば、日本は、家事や育児を手伝う男性が非常に少ないという意味で、とても珍しい国です。近所付き合いや子供の親との交流に関わる機会も非常に少ないですよね。北欧はもちろん、欧州の中では保守的なイタリアやドイツでさえ、はるかに日本の上を行っています。

男性は、家事の分担がパートナーの負担を軽くするだけでなく、家事に携わる時間をつくることで、自分自身の生活にもバランスが生まれることを認識すべきです。