日本円は4月末、34年ぶりとなる1ドル=160円まで円安が進んだ。この歴史的円安はいつまで続くのか。伊藤忠総研チーフエコノミストの武田淳さんは「多くのエコノミストが3月には140円台まで円高が進むと予想したが、見通しが甘かった。しかし年末までには歴史的円安のトレンドは終わりを迎える可能性が高い」という――。
年初は円高予想がコンセンサスだった
今年の初め、エコノミストなど市場関係者の多くは、円安がピークアウトし徐々に円高が進むと予想していた。QUICK月次調査(外為)1月調査(1月22日公表)によると、調査時点で1ドル=145円程度だったドル円相場の先行きについて、回答した76人の平均で3月末に142.83円、6月末には140.04円まで円高が進むと予想されていた。
円高予想の最大の拠り所は、日米の金利差が縮小するという見通しであった。ここ数年、ドル円相場の水準は日本と米国の長期金利の差で概ね説明できていたためである。
実際の数字で確認すると(図表1)、米国の長期金利(10年国債利回り)は2022年初の2%弱から2023年後半には4%を超えて上昇、その間、日本の長期金利はゼロ%近くからせいぜい1%に近づく程度であり、両者の差は拡大、それに伴ってドル円相場も1ドル=110円台後半から150円台まで円安が進んだ。
ただ今後は、日本の長期金利がデフレ脱却で上昇傾向となる一方、米国ではそろそろ金融引き締めの効果が表れ景気は減速、長期金利は低下に向かい、日米の金利差は縮小、ドル円相場は円高方向に転じる、と多くのエコノミストが予想したわけである。