サルコペニアの兆候を測れる、もうひとつの部位
サルコペニアの兆候は、握力にも現れることがわかっています。2015年、カナダのマクマスター大学のダリル・レオン博士が医学誌『Lancet』に発表した研究で、握力が弱いほどさまざまな死亡リスクが高まることが判明したのです。
この研究は、世界17か国の17万人以上(年齢35~70歳)を約4年間追跡調査したもので、握力が5kg低下するごとに、「すべての原因での死亡リスク」が16%、「心臓関連死リスク」が17%以上、「脳卒中リスク」が9%、「心筋梗塞リスク」が7%以上上昇することが明らかになったのです。
ただし、握力の強い人は、もともとよく運動している傾向にあるため、その点からも死亡リスクが低いのだと考えられます。つまり、握力の低下は、サルコペニアの兆候や、運動量を測る指標になるといえるでしょう。
文部科学省のデータによると、男性は30~34歳で握力のピーク(最高48kg)を迎え、女性は40~44歳でピーク(最高29kg)を迎えます。
握力は、体の他の部位の筋肉よりもピークを迎える年齢が高く、かつ20代から50代まで力の差があまりありません。
寝る前に手足を「ギュッパッ」で握力を鍛える
これは、握力は日常生活において頻繁に使われるからだと考えられます。手でつかむ、つまむ、握る、絞る、結ぶ、持ち上げる……など、生活の中で握力を必要とする場面は非常に多いです。使う機会が多いぶん、自然と鍛えられやすい部分だといえます。それでも50代以降に、握力は徐々に衰えていきます。日常生活において活動量が減るのがその一因でしょう。握力をキープするには、「手を使う」仕事や家事を積極的に行うことが大切です。
また、次の「手指足指ギュッパッ運動」をしてみましょう。握力を鍛えると同時に、足の指も鍛えることで、毛細血管の血流を促し、むくみや血栓の予防にもなる運動です。1日の終わりにベッドの上で行ってみてください。
仰向けになり、ひじを曲げて、両手を上に向ける
【手の指】
・親指を内側に入れて、強く握る(ギュッ)
・指先まで目いっぱい開く(パッ)
・10回繰り返す
【足の指】
・足首を伸ばして、足指を強く握る(ギュッ)
・足首を手前に曲げ、足指を思い切り開く(パッ)
・10回繰り返す