米国のシンクタンク「ジャーマン・マーシャル財団」(GMF)が提供する分析ツールで調べると、2022年5月18日までの30日間に在日ロシア大使館のアカウントが投稿したツイートは732件。8万件以上のリツイート、22万件近い「いいね」を集めた。

拡散力ではロシア外務省をも上回り、日本語圏の外でも一定の役割を果たしているとの見方もある。

「ロシア政府のツイッターアカウントは、誤情報を拡散するために連携している」。SNS分析が専門のティモシー・グラハム・豪クイーンズランド工科大上級講師はそう指摘する。

グラハムさんは、ロシア政府機関のうち、在日大使館を含む主要な75のアカウントについて、ウクライナ侵攻翌日から1週間の投稿を分析した。

その結果、これらのアカウントはほぼ同じタイミングで同じ内容の投稿をリツイートする傾向が確認されたという。75アカウントのフォロワーの合計は730万人を超える。

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アルゴリズムを操作し、ボットで主張を拡散

ツイッターのアルゴリズム(計算手順)は、ある投稿が短期間に多くの注目を集めたと判断すれば、その投稿を他のユーザーに勧めたり、トレンドリストに表示したりする。

ロシア政府アカウントのリツイートの連携は、このような特性を利用した「アルゴリズムの操作」を意図したものだとグラハムさんは指摘する。

従来、多言語でロシアのプロパガンダ発信を担ってきたのは「RT(旧ロシア・トゥデイ)」や「スプートニク」といった政府系メディアだった。しかし、欧州連合(EU)はウクライナ侵攻に伴う制裁の一環として、EU域内でこれらのメディアのコンテンツを配信することを禁じた。

政治メディア「ポリティコ」欧州版は2022年4月7日の記事で、ウクライナ侵攻を機に政権の主張に沿った「誤ったナラティブを押し通す」ため、ロシア政府アカウントの投稿が質も量も変容したとする複数の欧米当局者の見方を伝えている。

「外交官を情報戦の戦士に変えるロシア」と題したこの記事では、中国の外交官が自国の立場の正当性を主張するため、ツイッターなどで民主主義陣営に好戦的な表現で批判を繰り返す「戦狼外交」との類似性も指摘した。

ロシア政府の公式アカウントの投稿では、「ウクライナ軍による戦争犯罪の証拠」をうたう内容や、ロシア軍が撤退した後の首都キーウ近郊ブチャで多数の市民の遺体が見つかったことについて「うその挑発行為」だとする主張もあった。

グラハムさんの分析によれば、ロシアの侵略を正当化する誤情報を含む投稿は、「ボット」と呼ばれる自動プログラムの使用が疑われるアカウントでも拡散が促進されていたという。