「新しいものを寄ってたかって潰す」日本の国民性
【ひろ】んで、日本はリープフロッグを起こしそうな先進的な技術も政治や行政が潰しちゃうんですよね。例えば、日本のラジコンヘリコプター業界って世界の先端を行っていた。その流れがあったので、ドローン技術でも世界を席巻することができたと思うんですよ。でも、ドローンが出てくると危険だとかいろいろな理由をつけて法律で規制してしまった。結果的に日本のメーカーは壊滅的になりました。
【成毛】確かに、規制の問題はありますね。
【ひろ】日本は「まったく新しいもの」が出てきたときに「寄ってたかって潰す」国民性がありますよね。先進国でセグウェイが公道を走れない国って日本だけじゃないですか? なので、パーソナルモビリティが普及しているヨーロッパと比べるとビックリします。日本では、昔と移動の方法が基本的に変わってないんですよ。車と自転車と徒歩。「昭和のままだな~」と帰国するたびに思います。ということで、技術はあっても法律で規制するので、リープフロッグも起きづらいかなと。
【成毛】そういう日本の特徴を示しているのが、ロケットの打ち上げで失敗したときですよ。あれは“実験”なんだから、失敗してナンボ。たくさん失敗して「どこが失敗するのか」をわかったほうが得なんです。10回失敗して課題を全部潰せたら、11回目からはバンバン飛ぶわけだから。
【ひろ】「失敗を多くした人は、同じ失敗をしないから安全」というふうに考えられるんですけどね。まあ、日本にはない感覚ですけど。
【成毛】ないですね。
【ひろ】絶対に失敗しないコツは「何もしないこと」なので、結局、失敗もしていないけど、何もしていない人がトップになる。すると何も進まない。
【成毛】そこに病根があるとしたら、この日本は10年や20年では変わらないでしょうね。日本はこのまま経済的にも昔のような勢いは取り戻せないと思っています。
日本は経済大国よりもスペインを目指すべき
【ひろ】経済的にダメになった国は、物価が安くなりますよね。この前、スイスのバーガーキングに行ったらふたりで5000円もしました。なので、日本に帰ると物価がめっちゃ安いと感じるんですよ。しかも、治安もいいしサービスも行き届いている。すると外国人から人気の国になる。コロナが収束したら、インバウンド需要は激増して観光業界や飲食業界はうまくいくんじゃないかと思います。
【成毛】おっしゃるとおり。通貨の実力を測る総合的な指標である「実質実効為替レート」で見ると、日本円は適正レートの7割くらいだと思うんです。これは輸出産業にとってはお得な状況ですけど、考えてみれば日本にまともな輸出産業なんてなくなってしまいましたよね。みんな海外で生産している。一方で観光業界や飲食業界はポテンシャルが高くて、今度はそっちが主力産業になっていくはず。すると、このまま円安でいいと(笑)。
【ひろ】そうなっちゃいますよね。
【成毛】こういう話をすると「円安になると、外国製品を輸入するときに不利になる」と言われますが、実は日本が主に輸入しているモノってそもそも安くなってる。今、原油価格は上昇してますが、東南アジアやインドなどからの輸入品価格はそもそも安い。中国も投げ売りを始めるかもしれない。だから、円安になってもあんまり困っていないんです。「日本が安くなった」と騒がれていますが、僕はこのまま推移すると思うな。
【ひろ】昔のように家電メーカーや自動車業界が世界を席巻して、ガンガン輸出して稼ぎまくる時代を目指さなければ、日本は意外といいポジションになれると思うんですよ。
【成毛】そう。だから、僕は「日本はスペインを目指せ!」と思っています。
【ひろ】スペインは経済的には微妙ですけど、治安がよくて長寿の国で、ご飯もおいしいし、ダラダラ過ごしていても国民は幸せそうですよね。
【成毛】観光地もたくさんあって食べ物もおいしいので、日本も同じポジションが狙えます。
【ひろ】昔の栄光にすがって経済大国を目指すよりは、スペインのようなポジショニングのほうが現実的で、実はお得なのかもしれませんね。