親に介護が必要になったらどうすればいいのか。弁護士の森公任さんと森元みのりさんの共著『妻六法』(扶桑社)より、両親の介護義務について紹介しよう――。
歩行を補助する手
写真=iStock.com/KatarzynaBialasiewicz
※写真はイメージです

「同居している嫁が介護するべき」という定めは法律にはない

昔に比べると減りましたが、「妻」になると夫の家族の世話を一手に任されることも、決して珍しくはありません。特に、長男の妻は、義理の両親との同居を求められた挙句、家族の介護を任されることも多く、困っている方もいるかと思います。

では、法律上、妻の義理の両親への介護義務はどう扱われているのでしょうか?

民法877条1項では「直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある」と定められています。「直系の血族」とは、祖父母や父母、子どもや孫などを指します。

親の介護の必要性が発生したとしても、その義務を負うのはあくまで血のつながった息子や娘たちです。子どもの配偶者であり、あくまで「姻族(婚姻によってできた親戚)」である嫁には、義理の両親を介護する義務はありません。

「長男の嫁が義父母の介護をするのは当たり前」、「同居している嫁が介護するべき」などという考え方は、法律上は存在しないのです。

一方で、民法第752条では「夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない」と定められています。夫婦間の「協力」を考えるのであれば、夫が義理の両親の介護で困っている場合は、妻がその介護を手伝う必要もあるかもしれません。