感染を恐れるのにITサービスは使わない日本人

【成毛】不思議なのが、通常の肺炎で毎年約10万人が死んでいるのに、そういう数字を気にせず、とにかくコロナで死者が出たら大騒ぎをするという風潮です。ちなみに誤嚥性肺炎での死者は、これに加えて約4万人。

【ひろ】僕が不思議に思うのは「コロナに感染するのが怖いのなら、もっとIT系のサービスを駆使すればいいのに」ってことなんですよ。スーパーに買い物に行くのがいやならウーバーイーツを頼むとか、雑菌だらけの現金を使わないでキャッシュレスにするとか。しかも、専門的な知識は不要で、ちょっと学べばできることですよね。それなのに使おうとしない。

【成毛】それは高齢者だけの問題じゃないですよね。僕はコンビニのレジを待っているときに、しょっちゅうイラつくんです。会計が286円だったら、50円玉のお釣りがほしいからといって、一生懸命、財布の中にある小銭を数えて336円を払う人がいるでしょ。あれ、若い世代でもいますからね。

カフェで現金で支払いをする日本の女性
写真=iStock.com/Rossella De Berti
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【ひろ】僕、今年現金を使ったのって数回程度ですよ。むしろ現金を使うほうが珍しい。なので、日本の小銭ジャラジャラ文化を見ると、日本はまだまだ昭和だなと。

【成毛】現金派はクレジットカードに対する不信感がありますよね。「お金を使っている実感がない」とか「ついつい使いすぎてしまうから」とか言いますが、「使いすぎる」ってどういうことなのか。中学生でもお小遣いの自己管理はできるでしょう。

【ひろ】アプリなら使用明細が見られますし、クレジットカードは不正利用されても補償される。「そもそもお金がない」と嘆く人もいますが、それならよけいにクレジットカードを使うべきなんです。年会費無料でも、ポイント還元率が1%のカードとかがたくさんあって、それを使えば実質1%引きで買えるわけですから。

【成毛】僕なんてクレカにひもづけたモバイルSuicaを使ってポイントの二重取りをしているくらいですよ(笑)。でも、その横で小銭を出している人がいる。もはやデジタル化以前の問題。

デジタルを活用しないのは「私は頭が悪い」と言っているようなもの

【ひろ】目の前に便利なものがあっても、それを使おうとしない。日本は先進国の中でも一番低い経済成長率です。それはIT系の活用が遅れていることがひとつの原因といわれているじゃないですか。

【成毛】そうですね。そんなレベルなので、デジタルを活用するのが、遅れに遅れるのは当然。「カードだと、お金をつい使ってしまう」なんていうのは、すべてのデジタル化を阻む原因ですよ。だって、便利になってほしいとか生産性を上げてほしいという要求がないわけですからね。

【ひろ】それって「自分は頭が悪くて、新しいことを覚える気がない」と表明しているようなもので、本来、恥ずかしいと思うべきことじゃないですか。

【成毛】いや、恥ずかしいと思ってないかもしれませんよ。むしろ、昭和の頃のほうがそういったコンプレックスを持っていた。

【ひろ】昔は「自分はわからないから、頭のいい人に任せよう」という感覚がありましたよね。でも、今って中途半端に頭の悪い人が、「俺がわからないのはおまえのせいだ。わかるように説明しろ」っていう流れがある。

【成毛】それはSNSの影響が大きいかもしれませんね。論理的にものが考えられない人にも発言権が与えられたでしょ。しかも、日本語は読めても、文章の意味をきちんと理解できない人も多い。

【ひろ】昔は、ある程度の知性がないと、メディアで発言する機会もなかったわけですからね。

【成毛】そうやってSNSで発言し、自分はまともだと思って、自分の価値観で生きる。まあ、それはアメリカ人も同じですけどね。

【ひろ】それでもアメリカが成長しているのは、とんでもないバカがいる一方で、一部の天才がすごいシステムを作って帳尻を合わせているからですよね。でも、日本はどっちもいないから悲惨な状況だったりします。

【成毛】だから、日本のデジタル化が進むのはもう少し時間がかかりますね。

【ひろ】ですね(笑)。