橋下氏のテレビ出演に影響か
「橋下氏と維新の関係など、どうでもいいじゃないか」と思う人もいるかもしれない。しかし、この問題は今後、重要な論争となる可能性がある。
今、橋下氏は、テレビの情報番組のコメンテーターとして引っ張りだこだ。相手に切り込む鋭さ、分かりやすい弁舌は視聴者にも好評だという。彼の存在が維新に追い風となっているという見方もある。
橋下氏は政治家としてではなく、中立の文化人という扱いでテレビなどに出演している。しかし視聴者にとっては今も「維新の橋下氏」だ。維新をベタ褒めしているわけではないが、自民党を是々非々で論じ、立民などのリベラル勢力に厳しいコメントを浴びせる姿を見て、何となく維新の好感度を高めた人は少なくないはずだ。維新は昨年10月の衆院選で躍進し、最近の世論調査でも政党支持率で立民を上回ることがある。橋下氏の存在は、その下支えとして機能している。
今回、菅氏のツイートに対し維新が怒ったことで、はからずも橋下氏は今も維新の身内であるという印象を国民に植え付けた。そうなればテレビ局も無視するわけにはいかないだろう。
毎日放送は元日に「吉村さんが総理に」と放送
毎日放送(本社・大阪市)は元日の特別番組で橋下氏と松井氏、吉村洋文大阪府知事(維新副代表)が揃って出演。橋下、松井両氏が「吉村さんが総理に」などと語る一幕もあり、「政治的中立性を欠く」との批判を招いた。このため現在、虫明洋一社長が調査チームの立ち上げを命じ、社内調査を実施している。
大阪メディアを中心とした「維新びいき報道」が問題になり始めている時だけに、今回の問題は「今まで通り橋下氏を出演させ続けていいのか」という議論を巻き起こすことになるかもしれない。菅氏は1月にツイートした段階では、そういう意図を持っていたとはとても思えないが、馬場氏の論争の時には、その意図が感じ取れた。転んでもただでは起きない粘り腰は、いまだ健在ということだろうか。
ただし、短期的に見れば立民のほうがポイントを稼いだように見える今回の問題だが、中長期的に見ると立民にとってダメージとなる可能性もある。
今回の問題で立民は「政治家個人の発言について党はかかわらない」という姿勢を鮮明にしてしまった。今後、自民党や維新の議員の問題発言について、立民側が政治責任を求めても、、「立民は菅氏の『ヒトラーツイート』の時、責任を取らせなかった」と指摘されることになるだろう。まさに立民にとって、お馴染みのブーメランになる恐れもあるだろう。