クライアントが窮地を救ってくれた

その時、責任者であるプロマネはどうしたか。なんと、部下である私を売ったのです。

木村尚敬『修羅場のケーススタディ 令和を生き抜く中間管理職のための30問』(PHPビジネス新書)

「木村が使えない人間だからこんなことになった」と経営陣や社内に言いふらし、すべての責任を私に押しつけようとしました。

私はほとんど客先に常駐していたので、社内の人たちは私がどのような動き方をしていたかを知らないし、自分をかばってくれるほど仲の良い同僚もいません。抗弁しようがなく、私は窮地に立たされました。

その状況から救ってくれたのは、顧客企業の役員でした。

「木村だけは絶対にプロジェクトから外すな。彼が一番まともな仕事をするから」と私の会社にきっぱりと言ってくれたのです。さらに「ダメなのはプロマネだから、あいつこそ今すぐ外してくれ」と伝えて、その責任者は降ろされることになりました。

成果を出していれば足跡は必ず残る

この経験から言えるのは、自分が仕事で成果を出していれば、その足跡は必ずどこかに残るし、実績を評価してくれる人もいるということです。たとえ上司が部下に責任を押しつけようとしても、その実績が白日の下に晒されれば、社内の人たちに上司が嘘を言っていることを証明できます。

ただし、その際に「部長が言っていることは間違っている」などと自分で否定して回るのは得策ではありません。自力で正面突破しようとすれば、上司との間に余計な軋轢を生むだけなので、やり方には知恵を絞る必要があります。

おすすめは、私の場合のように、自分を理解してくれる人や味方になってくれる人から、証拠となる実績を会社側に示してもらうことです。社内に味方がいなくても、自分が顧客にしっかりと貢献していれば、クライアント側に誰か理解者がいるはずです。このケースのような海外進出プロジェクトなら、現地のカウンターパートから言ってもらうのもいいでしょう。

誰が協力者になってくれるかを見極め、周囲の力を賢く利用して、自分の身を守る。これもダークサイド・スキルの一つです。