リーダーは「怒ったら負け」
今回のケースのような状況に陥ると、誰もが「ふざけるな!」とつい怒りを爆発させたくなるでしょう。でも、怒りをぶつけても、スッキリするのは自分だけ。しかも一時的なものにすぎません。相手は感情を爆発させたあなたの揚げ足を取って、さらに悪い評判を広めようとすることでしょう。
自分がリーダーの立場になった時も同じです。言うことを聞かない部下に対してつい怒りをぶつけたくなるかもしれませんが、相手は傷ついて落ち込むか、そうでなければ自分に対する恨みや憎悪を増幅させるかで、何もいいことはありません。怒りで押さえつける恐怖政治が長続きしないことは、歴史が証明しています。
こうした「怒り」をコントロールする手法のことを、「アンガー・マネジメント」と言います。欧米ではリーダーに必須のスキルとされています。
感情のコントロール法として実践しやすいのは、「時間を置くこと」です。怒りを覚えたとしても、すぐ態度や言葉で表現しようとせず、一定の間を空けるのです。
誰かと議論していてムッとしたら、すぐに言い返すのではなく、いったん休憩を挟んだり退室するなどして、ひと呼吸置くようにする。頭に来るメールが届いたら、即座に返信せず、あえてしばらく寝かせておく。こうして時間を置くことで、次第に冷静になれます。
特に夜は感情がセーブしにくくなるので、要注意です。これは私自身も失敗したことがありますが、夜中にアルコールが入った状態で、怒りに任せて書いたメールほど後悔するものはありません。翌朝に読み返して、「しまった!」と青ざめたことが過去に何度かありました。
怒りを“演技”できれば切り札として使える
アンガー・マネジメントが身につくと、怒りを抑えるだけでなく、うまく利用することもできるようになります。
私は会議や交渉の場で、意図的に怒っているフリをすることがあります。経営改革を妨害しようとする反対派と対峙するような修羅場では、相手に対して強い態度で臨むのも一つの戦略です。つまり、怒りを自分の切り札として使うわけです。
ただし、これはあくまでも演技であり、本当に感情的になってしまったら議論や交渉はうまくいきません。いざという時に修羅場を切り抜けるためにも、日頃から怒りのコントロール術を習得しておきたいものです。