人事部が新卒社員の配属先を決める、知られざるメカニズム

では、どうやって人事部は新卒の配属先を決めているのか。

あるゼネコンでは技術職の設計・土木などの職種は大学の専門分野でほぼ決まるが、文系はほとんどが営業職から始まる。そのほかの部署については新入社員がほしいという部署に割り当てることになる。同社の人事部長はこう語る。

「配属先を決める最初の手がかりとなるのがインターンシップや入社面接だ。たとえばコミュニケーション力が高く、相手に好印象を与える人であれば広報に推薦する場合もあるし、対人理解力があり、人の面倒を見るのが好きなタイプは人事部に向いているなと思う。最終的には人事部の会議で決めるが、優秀な学生は部門長の間で取り合いになることもある」

また、近年では大学の専攻分野や本人の希望も踏まえて新入社員から専門職人材を育てていこうとする企業も増えている。IT企業の人事部長はこう語る。

「新卒の一部について専門分野別の採用を実施している。ある程度の専門性がないと世界で勝負できないという考えがある。選考では本人の希望も踏まえるが、たとえば法務、財務職であれば大学で専攻した分野の知識の深さや英語力などを加味して決めている。入社後は職種ごとに求められる職務能力の要件を明確にして自発的に専門性を極めることが大事になる。できれば27歳ぐらいに一本立ちし、35歳ぐらいまでに一つのビジネス領域でリーダーを張れる人材をつくりたい」

最近は日本企業でもジョブ型採用を謳い、特定のスキルと専門性を持つ学生を積極的に採用する企業も徐々に増えている。KDDIは本人の能力と希望に応じて最初の配属を確約する「WILLコース」採用を始めているが、2021年度新卒入社者の4割を占めている。

「上司ガチャ」で新卒社員の一生は決まる

ところで、配属ガチャのもうひとつの問題が配属先での上司や教育担当者との関係だ。運良く希望部署に配属されても、ちゃんと指導してくれない、あるいは上司の高圧的な態度についていけないと悩む新人もいる。

“ハズレ”上司との人間関係の悪化で離職する人も多い。

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厚生労働省の「平成30年若年者雇用実態調査」によると、初めて勤務した会社をやめた理由のトップ3は「労働時間・休日・休暇の条件がよくなかった」(30.3%)、「人間関係がよくなかった」(26.9%)、「賃金の条件がよくなかった」(23.4%)――。しかも入社後1年未満では「人間関係がよくなかった」が約4割と最も高い割合となっている。

じつは人事部はこの“上司ガチャ”問題に最も気を遣っている。会社の中にはプレイヤーとしては優秀でも、コミュニケーション力が低く、指導力に欠ける上司もいれば、部下の意見にあまり耳を傾けることがなく、一方的にしゃべりまくり、ときには過去の栄光をひけらかす昭和的上司も残存する。そんな上司に嫌気がさして入社直後から転職サイトに登録する新人も少なくないといわれる。