4月1日に入社式を実施する企業は多い。新人社員はこの日、自分のボス(管理職)にも対面する。人事ジャーナリストの溝上憲文氏は「人事部からの評価が高まっているのが“金八型”の課長&部長。面倒見がよく新人のやる気を引き出す力が突出し、いずれ役員などに昇進する可能性が高い」という。最新のアタリ・ハズレ上司の特徴を紹介しよう――。
組織
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アタリ上司かハズレ上司か、4月1日の入社式は審判の日である

前回の記事で“上司ガチャ”問題に触れた。

新入社員の配属先の上司がどんな人物かによって、仕事のモチベーションも大きく変わってくる。ソーシャルゲームの「ガチャ」になぞらえ、上司や教育担当者に恵まれた場合は「アタリ」、そうでない場合は「ハズレ」。ハズレ先輩・上司に遭遇すると、せっかく夢と希望を抱いて入った会社人生も台無しになってしまうおそれがある、という話だ。

人事部もその点は気にしていて、最近は新入社員の性格や適性検査などを参考に、指導する上司を慎重に決めるようにしているという。中でも人事部が最も重宝しているのが部下育成に長けた“金八課長”“金八部長”と呼ばれる管理職だ。

広告会社の人事部長は次のように解説する。

「どんな新人でもオールラウンドに指導や育成ができる人。新人の価値観や考え方をじっくり聞いた上で仕事の意味を丁寧に教えることができる。ストレス耐性の弱い新人でも金八課長のところに送れば安心です」

人事部業界で評価が高まっている「金八課長・部長」

また、この金八上司たちは「将来の役員候補と目される存在になりつつある。管理職全体の1割程度しかいない希少価値のある人材」(人事部長)だ。

それほど新人の育成は難しいのか。ゼネコンの人事部長はこう語る。

「じつは社員アンケート調査を実施したところ、最近の新人は『40代以上の人と話をするのが怖い』ということがわかったんです。自分の父親に近い年代の人だと、話が噛み合わないし、話も聞いてくれないので戸惑ったり、怖いと感じたりするようです。ウチのような業種の場合、とくに現場に配属されると、職人気質の人が多く、職場がどうしても体育会的な雰囲気になる。打たれ弱い新人は、年輩の社員と接するのを怖がる傾向があります」

だからといって新人を配属しないわけにはいかない。そういうとき頼りになるのが金八だ。

「新人の扱いが上手い管理職に預けることになりますが、そういう人の最大の特徴は聞き上手であること。じっくり話を聞いたうえで、今の仕事が本人のキャリアのために必要であることを丁寧に説明し、目指すべきゴールを設定してあげる。『今はムダな仕事だと思っているかもしれないが、いずれきっと役に立つから』『今はつらいかもしれないが、だから君にやらせるんだ』と、本人と信頼関係を築き、やる気をかきたてるのが非常に上手いんです。コーチングの名手ともいえますが、言葉では簡単だが、できる人は少ない」