なぜ、金八上司は上へ上へと引き上げられるようになったのか

ジャイアン課長や健さん課長に比べて部下の評価の高い金八課長だとしても、なぜ出世するのか。

組織
イラスト=iStock.com/Rawpixel
※イラストはイメージです

広告会社の人事部長は「以前と較べて昇進の基準が変わってきている」と話す。

「以前はパワハラっぽい言動をしても、売り上げなどの数字を上げた人が役員に昇進していました。昇進時期に人事が『この人物は過去に部署の社員を疲弊させ、何人かの社員がうつ病で入院しています』と経営陣にご注進しても『いや彼は会社に貢献しているし、優秀な人間だ』と、一蹴されたこともある。実際に今も優秀な成績を上げただけで部長や役員になっている人も確かにいます。

しかし、この5~6年の間に昇進の評価基準は明らかに変わってきている。数字だけを上げた人よりも、部下を育てるのがうまく、部下の背中を押して前向きに仕事をさせるような人が管理職として能力が高いという評価に変わっています。部長昇進では、最近は迷わず金八課長を選ぶようになっている」

もちろん昇進基準は業種・企業によっても異なる。だが、業界を超えて役員になれない共通のタイプについて元メガバンクの人事部長にこんな話を聞いたことがある。

「暗い人、細かく見える人、女性に嫌われる人、プライドが高い人です。大手企業の経営層に共通するのは明るさ。銀行だと暗いというだけで評価が下がるし、あの人は何事も細かすぎると思われる人も嫌われる。女性は利害得失に関係なく本質を見抜く力があり、女性に嫌われる男性はよほど人間性に問題がある人だと思います。プライドや自尊心は人間にとっては大事だが、そのプライドと自分の実力の差が大きい人は好かれることはない」

役員になる人は、明るく柔軟で謙虚で、異性にも好感を持たれる

逆に言えば、役員になる人は、明るく、柔軟さを持ち、誰にでも謙虚で、異性にも好感を持たれるタイプということになる。少なくとも部下育成の巧みな金八管理職はこの要件に当てはまるだろう。

しかも、最近の役員昇進では過去の実績よりもマネジメントとしての品格を重視するようになったと、前出のゼネコンの人事部長は語る。

「確かに当社でも役員に推薦される人は各事業部の成績トップが多かったですが、業界の不祥事が相次ぎ、コンプライアンスを重視してきています。また、コーポレートガバナンスの強化で社外役員も審査も厳しくなり、部下を酷使してバリバリ働いてきた仕事人間だと、審査の段階で『この人は人間的に会社を代表する器なのか』という疑問符が入るようになりました。マネジメントとしての人間性や清廉、品格さが求められるようになっている」

実績よりマネジメント力、人間性。こうした上へ上へと引き上げられる人の傾向は他の企業にも言えることに違いない。金八課長、金八部長はまさにその代表格である。ただ、前述したようにそういうアタリの人材に新人社員が遭遇できる可能性は極めて低いと言わざるをえないのが日本の現実なのだ。

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