「守りの自粛」だけでは負けてしまう
受け身の検査に過ぎないPCR、抗体検査や自粛は、問題を解決しないことは自明です。
米国感染症研究所のファウチ所長はワクチンの有効性を50%ほどだろうと予測していますが(※18)、登場すれば安心につながるでしょう。日本用のワクチン確保の報道も少しだけ流れました。最初中国やアジアで起きて日本で起きていることを観察して洞察した私の予想を、補佐する論が報告されるようになりました(※19)。心強いかぎりです。
けれども「検査を拡充したら、ワクチンが出たら、治療薬が出たら」と結論を先延ばししてはいけません。失点ゼロでも自ら得点しないかぎり、良くても引き分けの敗北パターンです。
要は心の持ちようです。
新型コロナウイルスは、遺伝子RNAと殻しか持たない弱い物質です。細胞内だけでしか増殖できません。自然界のものに付着しても短期間で壊れてしまいます。細菌のように、自然物をエサにして自己増殖することもできません。
真夏の日光も浴びたいし、秋には涼しい高原を歩きたいものです。外で友達と元気に遊んだりスポーツしたりする子供たちの姿を眺めつつ弁当を食べることは、平和な国ならではの至福の一つです。公園の芝生にウイルスはいません、外に出て自分で得点を重ねていきましょう。
私は、流行は6月から10月初旬まで小康状態だろうと予想しています。まんえん期では、クラスターと呼ばれるものも調査拡大による陽性者の判明にすぎず重症者は少ないものです。
日本人は何をするにも真面目すぎる
そうは言っても、高齢で持病もあるし……と思われる方も多いでしょう。当面、それで良いと思います。不安な間は、無理をしなくて良いでしょう。ただ心に余裕を作り、正しく判断する気持ちを育てておきましょう。
日本人は、何をするにも真面目すぎます。真面目さが清潔と整頓を生んでいるのですが、行き過ぎはよくありません。他人がみんなウイルスのカタマリに見えてしまいます。
新型コロナウイルスは、ここかしこに薄く広がりつつも悪さはしていません。私たちの体には細菌もウイルスも常在しています。コロナの話題になるたびテレビを消していたら、元気に生活できるようになりました! とおっしゃってくれる患者さんが増えています。テレビを消しても、見逃して損してしまうことはありません。
それよりも、息を整え自分の思考を自分の手に取り戻しましょう。夏や秋の早朝の体操や散歩は、気持ちのよいものです。外に出て、散歩しながら樹々を眺めて自分の頭で思索しましょう。
夏の今、流行は凪状態なので安心して熱中症に気をつけて散歩などをすればフレイル(年齢を重ねて虚弱になること)と心肺能力低下の予防にもなります。冬にワクチンや治療薬が出たら、追加の安心になると考えましょう。
心に遊びや余裕を作って希望をはぐくむ気の持ちようが、正しい判断をしたり活き活きとした生活を送ったりする処方箋になります。恐怖に追いつめられると他者に自分の人生を乗っ取られて、判断を誤ります。コロナ災害は数十兆円かけた一つの勉強でした。それを飛躍につながる先行投資に変えていくビジョンが大切です。
一人ひとりが元気になりさえすれば、経済活動も自然に浮上してきます。心に余裕が生まれれば、日本の国際的な新しいやるべき役割にも目を配ることができるようになるでしょう。私は、そう願っています。