質があがれば、インプットの時間を作れる

たとえば地方の講演会に招かれた際、以前は日帰りしていましたが、今では、必ずその土地で宿泊するようにしています。そうしたことで、地域活性化のテーマについて講演会で話したり、本に書いたり、あるいは地方の政治課題についてテレビで話したりするための取材がきっちりできるようになりました。

日本の政治の課題などについても、今では他国の事例を知るために、その国を実際に訪れて取材をしています。

外に出かけてインプットするばかりではありません。自宅で本を読んだりする時間もきっちりと取れるようになったし、もっといえば、仕事のインプットからも少し離れ、家族と一緒に過ごす時間も取れるようになりました。

まず、量をこなすとウリに磨きがかかって確実に仕事の質が上がり、仕事の質が上がると自分の商品価値が高くなり、すると必然的に報酬単価が上がります。

直接的な表現になりましたが、これは「仕事の世界の定理」ともいうべきものです。

つまり、質の向上は報酬の上昇とセットになっているからこそ、質が上がることで量に追われなくなり、それまで数をこなすために使っていた時間を別のことにも割けるようになる。「量から質へのシフトチェンジ」は、こうして起こるのです。

「量をこなす」を目的にしてはならない

さらに、ここで生じる時間的余裕を何に使うかによっては、強みを増やし、掛け算することにもつながります。

僕も、地方出張のスケジュールを、余裕を持って組めるようになった分、その地域の歴史的名所や史跡をガイドさんの説明付きで巡ったりして自分が話すことができる題材を増やしています。僕自身、今もなお、強みの掛け算を模索しているところなのです。

このように、ウリを明確化し、自分の商品価値が高まれば、量に追われることなく仕事を取捨選択できるようになります。誰にでもできるような仕事は、あえて自分がやらなくてもいいという判断ができるようになる。そして時間的な余裕が生まれ、その分さらに自分の強みを増やし、磨き、新たな掛け算を生んでいくことができる。この循環になればしめたものです。

橋下徹『異端のすすめ 強みを武器にする生き方 』(SB新書)

そのために、まず徹底して量をこなしていく。目の前にある任された仕事を一生懸命やる。

「独立したけど思うように稼げない」「上司から、つまらない仕事ばかり振られる」などと腐っている場合ではないのです。ただし、量をこなす努力が自己目的化してはいけません。量をこなすのは、あくまでもウリを明確化し、自分の商品価値を高めるため。ある程度の量をこなしてみて、自分の商品価値が高まっているという手応えがまったく感じられない場合には、仕事をどんどん変えればいいのです。この点は、くれぐれも忘れないでほしいと思います。

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