仮に反論したとしても、反論すればするほど「やはり会社の態度が悪い」という印象を周囲に植えつけることになる。しかも採用申込を検討している者がネットで会社の悪評を目にすれば、「ちょっとやめておこう」ということになる可能性もある。

この売り手市場の時代に、あえてリスクの可能性があるところに申し込む必要はない。このように止めようのないネットへの記載に、我々はどのように対処するべきであろうか。

恐れるべきは、クレームを真実だと誤解する第三者

まず押さえておくべきは、我々がネットにおける記載を恐れるのは、クレーマーからの事実無根の記載そのものではないということだ。記載内容については、クレーマーが根拠のない事実を記載して会社を批判しているだけだと割り切ることもできるだろう。

実際に恐れているのは、事実に反する記載内容を真実だと誤解する第三者がいることだ。つまりフォローしないといけないのは、記載内容そのものではなく、第三者が自社をいかにイメージするかについてである。そのように整理すれば、対処法もおのずとわかってくる。

不適切な記載を目にした経営者からは「他の人の目に触れないように、すぐに抹消するよう手続きを進めてください」という相談を受けることがある。司法的手続などを利用することで、不適切な記載内容を抹消することができるケースはあるが、実際は必ず抹消できるとは限らない。しかも「今すぐに」ということもなかなか難しい。

とくに司法的手続をとるには、根拠を確保して申立てをする必要があるため、時間を要する。そもそも弁護士に依頼するのであれば、相談日を設定するまでにすら時間がかかるかもしれない。その間にも間違った情報は広がり続ける可能性もある。

こういったとき、相手の意見に反論するコメントを慌てて記載するのは得策ではない。むしろクレーマーの思うつぼであろう。反論すればするほど、「弱い立場の消費者の意見が悪徳な会社によってつぶされそうになっている」という構造に持ち込まれやすいからだ。

しかも何が真実であるのかの根拠をネットでは示すことができないため、第三者に「悪徳な会社が単に言い訳をしているのではないか」とさらなる誤解を抱かせることになりかねない。