神社で参拝をするときには、「二礼二拍手一礼」が正しい作法だと言われている。しかし宗教学者の島田裕巳氏は「平成になってから浸透した作法だ。祈るプロセスがなく、参拝する方法として好ましいものか疑問を感じる」と指摘する――。

※本稿は、島田裕巳『神社で拍手を打つな!』(中公新書ラクレ)の一部を再編集したものです。

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若い頃、「二礼二拍手一礼」はなかった

神社に参拝に行く人たちは少なくない。正月の初詣となると、毎年必ず特定の神社に参拝することをしきたりとしている人もいる。神社に赴いたときには、拝殿の前まで進み、そこで参拝を行う。

今、多くの人たちは、そのとき、「二礼二拍手一礼」という作法に(のっと)って、参拝している。二回礼をしてから、柏手かしわでを二度打ち、最後に一礼する。その前に軽くお辞儀をし、引き下がるときにも同じようにすることもある。

神社のなかには、賽銭(さいせん)箱のあるあたりに、このやり方について絵入りで解説しているようなところもある。これが神社に参拝するときの、正式なやり方である。今では、大半の人たちがそう考えている。ところが、その一方で、この参拝の仕方はどうも馴染(なじ)めない。そう感じている人たちもいるはずだ。

少し年齢が上の世代になれば、自分が若い頃は、そんな参拝の仕方はしていなかったと、昔を思い出している人たちもいるのではないだろうか。実際、二礼二拍手一礼という参拝の作法が広まったのは、それほど昔からのことではない。いつから広まったのかについては、はっきりしたことは分からないが、浸透したのは平成の時代になってからで、昭和の時代には、まだそれほど広まってはいなかったのではないだろうか。