「あなたの意見は大事だから電話を切る」

さりとて、時間が来たからといって、いきなり電話を切るというのもなかなかできることではないだろう。その場合には「申し訳ありません。○○様のご意見は伺いました。大事なご意見ですので、私が単独で判断することはできません。いったん上司と協議したうえで、検討させていただきます」などと言って切るようにする。

ここで大事なのは、「あなたの意見は大事だから電話を切る」というスタンスを明確にすることだ。内心では「これ以上電話を続けても無駄」と感じたとしても、表に出してはならない。相手からの電話がさらに続く結果になってしまう。

電話を切ることが苦手な人は、電話を切るにはクレーマーに納得してもらわなければならないと誤解している。「電話を切る」と「クレーマーが納得する」というのは、まったく別の問題である。クレーマーが納得しようがしまいが、電話を切っていい。そこをはっきりさせないと、電話を切ることをいつまでも言い出せない。

意識を向けるべきことは、「いかにしてクレーマーからの電話を切るか」であって、「いかにしてクレーマーに納得してもらうか」ではない。「電話を切る」というところからすれば、「クレーマーの意見を尊重している」という姿勢を見せることが効果的だ。これをされると、クレーマーとしても自分の意見を尊重されたうえでの対応であるため、無下にできなくなる。

いったん電話を切ってしまえば、あとは電話ではなく、書面で通知をすればいい。書面の内容としては、「検討のうえ、ご要望には添えない」というものでいい。クレーマーから再度電話があれば、「電話に出ない」という判断も含めて対応することになる。事後的なことは事後的に考えればいいのであって、まずは「電話を切る」ということにこだわっていただきたい。

クレーマーの主張を整理してあげる

クレーマーは、電話のなかでひたすら自分の要求や意見を連ねる。聞いている側としては、次第に何を言いたいのかわからなくなるときがある。そこで電話を切る時間が近づいてきたら、いったん話を整理するような相槌を打ってみると効果的だ。

たとえば、次のようなフレーズが使いやすい。

「○○様、今回はいろいろご不快な思いをさせて申し訳ありません。当社としては、○○様のご意見を踏まえて早急に対応を検討したいと考えております。ついては○○様のご要望としては、△△という理解でよろしいでしょうか。当方の不手際で誤解がありましたら申し訳ありませんので、確認させていただきました。長時間のお電話でお手を煩わせるのは本望ではありません。この内容で間違いなければ、上司と協議して改めて連絡させていただきます」