ヒトが二日酔いになるメカニズム
今年も、忘年会シーズンがやってきました。お酒はおいしく、宴会は楽しいものです。しかし、飲みすぎると翌朝には頭痛や吐き気がする二日酔いに悩まされます。私もお酒を飲むのは大好きで、若いころは二日酔いになることもありました。
二日酔いは、ホルムアルデヒドに代表されるアルコール分解過程で生じる有害な代謝産物や脱水、電解質バランスの乱れ、胃腸運動の低下、炎症反応といった多くの要因が関与する病態です。飲酒量が多いと発症しやすいのは確かですが、個人の代謝能力や飲酒当日の体調にも大きく左右されます。
そんな二日酔いを予防したり、いざ起きてしまったときに症状を和らげたりする方法として、さまざまな説があります。あまりにもいろいろありすぎて、いったいどの対策をすればいいのか迷いますね。そこで、実際に「医学的根拠あり」といえる方法が果たしてどの程度あるのか、文献をたどり探ってみました。
何か食べておいたほうがよいのか
さて、まずはお酒を飲む前の話から。よく「空きっ腹でお酒を飲むと二日酔いになりやすい」「胃に何か入れておけば二日酔いになりにくい」という説を耳にします。これは本当でしょうか。
じつは、血中アルコール濃度は、空腹時より食後に上がりにくいことを示した研究が複数あります。ただし、注意が必要なのは、血中アルコール濃度が上がりにくいからといって二日酔いになりにくいとは限らない点です。血中アルコール濃度が上がりにくいと、かえってお酒が進んでアルコールの総摂取量が増え、逆に二日酔いになりやすくなるかもしれません。
飲み会前に牛乳を飲んで「胃に膜(バリア)を作っておけば二日酔いになりにくい」という説もあります。私の母もそう言っていました。しかし、牛乳を飲んだぐらいでアルコールの吸収を物理的に防ぐような膜ができるとは考えにくいですし、私が探した限りでは牛乳摂取が二日酔いの予防や治療に役立ったという研究は見当たりませんでした。何もお腹に入れないよりは牛乳を飲んだほうがマシという程度でしょう。


