クレーマーからは「本日中に回答しろ」と言われることもある。その際には「本日中に上司と協議できるとは限りません。当社としてもお客様に対してできないことをできるようにお伝えすることはできませんので、ご了承ください」と言って断る。
電話を切った後の回答は、電話ではなく、できるだけ会社名を使って書面で発送したほうがいい。担当者は個人であっても、意見としてはあくまで会社のものだからだ。これに対して、クレーマーから電話があれば、上司の判断であると言って断る。会社として方針を決めたのであれば、そこから動いてはならない。
それでも電話が繰り返されるのであれば、電話に出ない対応も検討することになる。クレーマー担当は負担の大きな仕事ではあるが、スキルアップの機会でもある。前向きにとらえていただきたい。
ネットに書き込みをされたら
あるコールセンターでは、クレーマーからの執拗な電話で業務に支障が出ていた。そこで経営者は、「電話対応を拒否する」という方針を固めた。担当者らは相手に対して「電話による対応には応じられない」と回答した。相手は会社の対応に激高した。
それから数日後、匿名で明らかに事実無根のことがネットにおいて記載されるようになった。会社の態度がいかに横柄なものであるか、担当者の態度がいかに悪いかといったことがまことしやかに書かれていた。そこで私の事務所に相談ということになった。
ネットは、我々の暮らしの隅々まで広がるようになった。もはやネットのない暮らしは想像することができなくなった。ネットの世界では、誰でも自分の意見を不特定多数の人に容易に発信できる。そこには真実と虚構がない交ぜになっており、なにが真実であるのかわからないときがある。
記載を目にする側からすれば、そこに記載された内容がすべてである。そのため、記載された内容をありのまま事実として受け止めてしまうかもしれない。いったん自分のなかで「これは事実だ」と認識してしまうと、事後的に修正するのは簡単なことではない。
反論すればするほど悪印象
しかも人は「他の人も真実を知っておいてほしい」という良心から、真偽を確かめないまま、情報をさらに他の人に意図的に広めてしまう。間違った情報であっても、あっという間に拡散してしまう。そこにネットの怖さがある。
ネットに不適切な内容が記載されると、それを目にした人が記載内容から会社についてネガティブなイメージを抱くことになりかねない。会社は反論する余地もなく、ただひたすらイメージを崩されていくことになる。