政策金利を3度下げたことが、景気に好影響を及ぼしている

トランプ大統領は来年の大統領選挙をにらみ、景気を下支えするようFRBに強いプレッシャーをかけ続けています。FRBも世界的な景気後退に備えるべく「予防的に」政策金利(FF金利)を7月、9月、10月と3回のFOMC(連邦公開市場委員会)でそれぞれ0.25%ずつ下げました。

現状の政策金利は1.5%から1.75%が誘導ゾーンとなっています。米国の政策金利は、日本と同じく1日だけ銀行間で資金を貸し借りする市場の金利です。その金利を毎日のオペレーションでFRBが誘導しているのです。

一時は長期金利と短期金利の逆転が見えた米国の金利ですが、現状は、長期金利が短期金利を少し上回る水準で推移しています。長短金利の逆転が起こると、過去にはその時点から1年から1年半後には景気後退が起こっていました。

図表3からも今年の半ばころには長短金利の逆転が起こっているのが分かりますが、過去の経験のように、今後1年くらいで景気後退が起こるのかどうかに注目です。ちょうどその頃に大統領選挙があるからです。

国内景気を犠牲にしてまで国民は米中対立を望まない

金利の低下は、住宅価格に好影響を及ぼしています。住宅価格を表す「ケース・シラー住宅価格指数」(図表3)を見ると、2018年にはやや停滞感のあったものが、ここにきてまた上昇の傾向を見せ始めています。

これは金利低下による影響が大きいと考えられます。住宅は米国人にとっては今でもアメリカンドリームの象徴です。米国人は頭金が1割程度たまれば住宅を買うと言われていますが、自身の財産価値が減ることを多くの人は望んでいません。緩やかに上昇を続けることが消費にも安心感を与えるのです。

ここまで見たように、米国の国内景気は、企業側に若干の不安感はあるものの、今のところ比較的順調と言えます。トランプ大統領も1年後に迫った大統領選挙に焦点をあて、「アメリカファースト」を標榜しながらも、国内景気が緩やかに拡大することを望んでいることは間違いありません。その点では、米中摩擦の状況にも注目が必要ですが、国内景気を大きく犠牲にしてまでの対立は望んでいないと考えられます。

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