消費税が10%に引き上げられた。経営コンサルタントの小宮一慶氏は「5%→8%の2014年にはインバウンド消費などのラッキーがあったが、今回はない。政府はポイント還元などの景気刺激策を打ち出しているが、それも東京五輪直前の6月ごろには終わる。その頃の日本経済はどうなっているか」という——。
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消費税5%→8%増税時には「2つのラッキー」があった

10月1日に消費税率が2%上がり、10%となりました。今回は、キャッシュレス決済での2%還元やプレミアム付き商品券などの景気対策がなされるので、5%から8%へ3%分増税された2014年4月ほどのマイナスのインパクトはないと考えられます。また、同時に始まった幼稚園や保育所の無償化も景気にはプラスです。

ポイント還元を実施するのは中小企業だけですが、大企業もそれに対抗するためにキャンペーンを行うところがあるので、消費にはプラスに働くでしょう。

ただ、私は、担当させていただいているコンサルティング先の企業には、保険の意味も含めて「普段より手元流動性を厚くしておくように」とアドバイスしています。いざというときに頼りになるのは手持ち資金だけ。ポイント還元などが終わる頃から景気が悪化する可能性が強く、それへの警戒が必要だからです。

ここで前回増税した後の経済状況を振り返ってみましょう。それにより今後の予想や対策ができるはずです。

2014年の前回増税時には、支出面での名目GDPの5割強を支える家計の支出が大きく落ち込みました。政府はそのことを十分に踏まえて、今回の増税の景気対策を行っているのです。

ただ、その時期も含めて、全体的には日本経済は拡大を続けました。増税を乗り越えながら、戦後最長の景気拡大が続いたのです。先にも述べたように、GDPを大きく支える家計の支出のマイナスが続いたにもかかわらずです。それには、前回増税時には、「2つのラッキー」があったからだと私は考えています。