1992年、ブッシュ氏がクリントン氏に敗北した背景

もちろん、米中摩擦に代表されるような国際関係、とくに「アメリカファースト」などの状況も大統領選に影響を及ぼしますが、これも結局は、米国の貿易赤字削減や国内の雇用を守るという経済問題に直結します。

私の記憶に鮮明なのは、ブッシュ(父)大統領だった当時に湾岸戦争があり、その当時は、ブッシュ大統領の支持率が90%くらいまで上昇しました。私も、戦勝パレードの日にたまたまニューヨークにいてその熱狂ぶりに圧倒されましたが、それから2年もたたないで行われた92年の大統領選挙ではブッシュ氏はクリントン氏に敗北しました。政治的熱狂は続かなかったのです。

現状の米国経済は順調だが……

米国経済は、2008年9月のリーマンショック、その翌年にかけての世界同時不況という大きな荒波を経験した後、10年もの長期に及ぶ景気拡大を続けています。この5年ほどの実質成長率は2%台で、直近の2019年7~9月の成長率は1.9%(速報値)とそれほど高い成長率ではないものの、比較的安定した成長を続けています。

また、生活に大きな影響を与える消費者物価の水準ですが、図表にあるように2015年には0%近くまで下がり、一方2018年には一時期2%台後半まで上昇したものの、比較的安定しています。米国の中央銀行であるFRB(連邦準備制度理事会)は2%を目標としていますが、現状は1%台後半でこちらもまずまずといった状況です。

直近の消費者物価の水準と失業率

政府や中央銀行が、物価とともにとても気にする失業率も改善が続き、直近では3.6%とリーマンショック前よりも良い数字となっています。雇用に関しては、所得の二極化が大きな問題となっていますが、失業率という観点からは全くといっていいほど問題のない状態だと言えます。