賢い人がいとも簡単にバカ化する集団心理の怖さ
本来、頭のいい人々による、そうした誤った言動や判断はなぜ生まれるのか。
心理学の世界では、かなり前から(とくに第2次世界大戦の心理メカニズムの研究において)、人間は個人で判断・思考する場合と、集団でそれをする場合では、答えや思考パターンが変わってしまうことが知られている。
そのひとつの現象が、「リスキーシフト」と呼ばれるものだ。人間は自分ひとりで判断するより、集団で判断するほうが、かえって向こう見ずな判断をしがちだということである。
また、社会心理学の実験では下記のようなものがある。
ある人物がベンチャー企業からヘッドハンティングを受けたというケースを仮定する。条件は、今もらっている給料の2倍を出すというものである。ただし、その会社は今の会社より不安定で、来年倒産するかもしれないという別の条件もある。この際、その会社が来年倒産するリスク(可能性)がどのくらいなら、そこに行くのをやめるかという調査をする。
集団になるとなぜか「強気の判断」をするバカ
ひとりで判断する場合は、リスク10~30%を選ぶ人が多い一方、複数人で話し合った後だとよりリスクを取る傾向があったというのだ。人間は、集団になると弱腰と思われたくないためか、無理をして強気の判断をする傾向があるようだ。
第2次大戦の開戦前も、国のかじ取りをする人でさえ個人レベルでは「開戦をしないほうがいい」と思っていた人が多かったのに、御前会議になると強気の姿勢を示してしまって、あのような結果になったという。
「三人寄れば文殊の知恵」ということわざがある。ひとりで判断するより大勢で判断したほうが、いろいろなアイデアも出るし、穏当な結論となるということだが、実際はそうでないこともあるということだろう。
このような「集団の特性」は知っておいて損はない。
ほかにも社会心理学が明らかにしているさまざまな集団心理がある。