安倍政権は国民の「グループ心理」を見分けたから長期政権に
「ポピュリズム」ということばが使われて久しいが、民主主義の社会では、政治家が大衆迎合のような言動によって、国民を以上のような3つの「グループ心理」ででまとめ上げ、選挙を有利に展開しようとすることがしばしばある。
とはいえ、人々の心は常に一定ではなく、こうした「グループ心理」も絶えずうつろいやすい状態にある。そうした傾向を熟知している政治家は、国民の「今の心理」を洞察しながら、「国民は今どのグループ心理に近いか」を考えたり、「どのグループ心理なら仕掛けやすいか」を考えたりする。その戦術がぴたりとはまると長期政権につながる。
安倍晋三首相もそうした技量に優れた政治家と言えるだろう。
民主党末期の混乱期にアベノミクスを掲げて、人々を「依存グループ」の心理にしたかと思うと、東京五輪を招致して「つがいグループ」の希望ムードをもたらし、さらに韓国や北朝鮮を仮想敵にして「闘争・逃避グループ」の心理を醸成するなどときどき流れを変えることで一定以上の支持を集めている。
ただ、この手のグループ心理に巻き込まれている時は、人間は深くものを考えなくなることも事実である。
アベノミクスによって株価は上がったが、実質賃金を下げ、ドル建てのGDPを大きく下げていることはあまり論じられない。来年のオリンピックについてもその反動の不景気も含めてデメリットを論じる声は小さい。韓国敵視政策も経済的にはデメリットのほうが大きい可能性が高いが、被害を受ける当事者以外はその事実に鈍感だ。
グループ心理で思考停止になってしまわないような努力を
グループ心理の怖いところは、その心理に染まることである種の思考停止が起こることだ。
わが国が過去に戦争を始めるという完全に間違った意思決定をしたことからもわかるように、かなりの経験を積み、かなりの知能をもち、かなりの教育を受けた人々が、いともたやすくグループ心理に盲目的に従って致命的で間違った決定や判断をしてしまう。
もちろんグループ心理そのものが必ずしも誤っているとは限らない。問題は、それと違う思考ができないことなのだ。他の選択肢や考えを思いつかなくなることだ。
自分がグループ心理に染まっていないか。あるいは、グループや世の中では、こういう話になっているが、自分ならどう考えるか。相手の立場に立ったらどういう見方ができるか。そうした自己チェックやセルフモニタリングは、賢い人間がバカにならないために必須のことと言えるのではないだろうか。