イギリスはロンドンのど真ん中に「BSL4施設」がある

5種類の病原体を保存して扱う施設が、東京都武蔵村山市にある感染研の村山庁舎の「BSL4施設」だ。BSL4施設とは、国際基準のバイオセーフティー・レベルの4段階中、最も危険度が高い病原体(日本の感染症法上の1類感染症にほぼ相当)を安全に取り扱える施設を指す。物理的に封じ込めができる施設の機能から「P4施設」とも呼ぶ。

BSL4施設は、内部の気圧を低く保って病原体が外部に漏れない構造で、ウイルスなどの病原体はグローブボックス(密閉箱)に特殊な穴から手を入れて扱う。テロ対策として室内などはカメラで常時監視されている。

欧米など20カ国以上に60カ所ほどある。たとえばイギリスはロンドンのど真ん中にあり、政府がいかに市民の理解を得ているかがよく分かる。

施設があるのに稼働できない状態が続いたワケ

感染研村山庁舎の施設は、1981年に完成してコレラなど1~3段階までの低レベルの病原体の研究を行っていたが、危険度が「4」という最高レベルの病原体は、40年近くにわたって扱うことができなかった。施設に扱える機能があるのに最高レベルの病原体が扱えないというおかしな状態が続いた。

原因のひとつは周辺住民の反対だ。そうした事態を招いたのは、安全性に対する厚労省の説明不足だろう。

4年前の2015年8月に初めてBSL4施設としての指定を受け、五輪を来年に控えた今年5月になってようやく、周辺住民を説得してエボラウイルスなどの輸入ができるようになった。切羽詰まっての対応だった。

この夏、感染研村山庁舎は国内初のBSL4施設として動き出すが、先進7カ国(G7)中、稼働したBSL4施設がないのは日本だけだった。

果たして厚労省は周辺住民の理解を得るために、どのような努力をしてきたのか。