エボラは致死率9割なのに治療薬とワクチンがない
かつて西アフリカ(リベリア、ギニア、シエラレオネなど)では、2013年暮れからエボラ出血熱がはやり出し、翌2014年の1年間で感染者は1万5000人を超え、うち死者は5000人以上にも達した。WHO(世界保健機関)も緊急事態を宣言した。最大規模のアウトブレイク(流行)だった。
昨年8月には同じアフリカのコンゴ共和国で感染者や患者が多数出ている。感染被害は隣国のウガンダ共和国にまで及び、感染の拡大にWHOが警戒している。
エボラウイルスは患者の血液や体液、嘔吐物に直接触れることで感染する。患者との濃厚接触がない限り、感染はしない。
感染後3日~10日で発病し、高熱を出して目や鼻、腸など全身から出血し、多くの患者が命を落とす。有効性と安全性が確認された治療薬やワクチンはなく、対症療法しかない。
西アフリカと事情が違う日本で流行するリスクはゼロ
西アフリカでアウトブレイクしたとき、日本国内でも感染が疑われる患者が数人出て厚労省が検査に乗り出した。西アフリカからの帰国者で急な発熱症状などがあったが、結局、感染者はいなかった。
厚労省はこれを捉えて、「日本でもエボラ感染の危険性がある」と訴え、感染研の村山庁舎をBSL4施設として稼働するよう周辺住民に主張した。だが、日本で西アフリカのようなアウトブレイクが起こる可能性はゼロである。
西アフリカでの感染拡大には、大きく3つの理由がある。
②公衆衛生の障害となる風習や迷信がある。
③人口の過密地域で起きた。
日本とは全く事情が違うのである。たとえ日本でエボラ感染者が出たとしても、エボラウイルスの特性を考えれば、封じ込めは十分に可能だ。
エボラウイルスはインフルエンザウイルスのように空気感染することはない。患者が発熱して下痢や嘔吐の症状が出るようになって初めてその便や吐瀉物が感染源となる。発熱した患者をきちんと隔離し、適切な治療を施すことによって感染の拡大は抑えられる。西アフリカでは実際にこのやり方でかなりの効果を上げた。まして日本は高度な医療設備・技術が整っている。むやみにエボラの侵入に怯える必要はないのである。