これでは五輪にかこつける厚労省と同じ
「外国人観光客の増加などで、新たな感染症が国内に侵入するリスクが高まっている。来年夏には東京五輪・パラリンピックが開かれる。感染症対策の強化は、喫緊の課題と言えよう」
これでは五輪にかこつける厚労省と同じだ。保守という読売のスタンス上、こう書かねばならなかったのかもしれないが、読者としては体制への批判もほしい。
読売社説は後半でこうも指摘する。
「施設は住宅密集地にあり、不安を覚える住民も少なくない。施設自体は1981年に完成したが、事故を警戒する住民の反対で、危険度の極めて高い病原体は扱ってこなかった経緯がある」
「感染研は昨年冬から、施設の安全性について住民向け説明会を10回以上開き、大方の同意を得た。今後も説明を重ね、住民との信頼関係を深める必要がある」
周辺住民に全ての問題があるというような書きぶり
「住民の反対」「説明会を10回以上」など読売社説は、施設の本格的な稼働に反対してきた住民に全ての問題があるというような書きぶりである。どうして厚労省の動きの鈍さと腰の重さを批判しないのか。社説として必要なバランス感覚を失っている。
続いて読売社説は書く。
「実際に国内で患者が発生した場合には、感染拡大を防ぐため、病院や地域の保健所、交通機関などの密接な連携がカギを握る。厚労省が中心となって、日頃から関係機関の意思疎通を図っておかなければならない」
読売社説の指摘を待つまでもなく、関係する組織や機関同士の連携は重要である。
問題は縦割りになりがちな組織(特に公的機関)を、いかに他の組織と結び付けてネットワークを作り上げてくかである。そのためにも読売社説が主張するように「日頃からの意思疎通」が欠かせない。
(写真=時事通信フォト)