北朝鮮とロシアの思惑が完璧に一致した
前述した記者会見でのプーチン氏の発言は、北朝鮮に対する支援の表明である。プーチン氏には北朝鮮との確固たる結び付きを作り上げることで、朝鮮半島問題における影響力を強め、ロシアの存在を国際社会にアピールしたいとの思惑がある。
そもそも露朝首脳会談を最初に求めたのは、ロシア側だった。昨年5月、ラブロフ外相が平壌を訪問。同年6月に予定されていた初の米朝首脳会談の前にロシアを訪問するよう金正恩氏に求めた。このとき金正恩氏はロシアを無視し、アメリカとの直接交渉を重視した。
ところが今年2月の米朝首脳会談が物別れに終わり、事態が一変した。金正恩氏はロシアに頼った。プーチン氏にとっても核・ミサイル開発で揺れる朝鮮半島に大きな足場を築く絶好のチャンスだった。両者の思惑は完璧に一致した。
プーチン氏は記者会見で「北朝鮮が、アメリカや韓国による安全の保証では十分でないと言うなら、6カ国協議のような形態が必要になるだろう」とも語った。
金正恩氏に助けを求めさせて、北朝鮮を利用する
プーチン氏は北朝鮮の大きな後ろ盾になっている中国とも手を組んで、制裁の早期緩和をアメリカに働きかけたいのだろう。そのために6カ国協議を再開させ、多国間の枠組みの中で北朝鮮に確固たる保証を与えようとしているのだ。簡単に言えば、国際社会を牛耳りたいのである。
前回記事(4月24日付)では、金正恩氏のアメリカに対する外交戦術について「実にうまい戦術である。金正恩氏は『トランプ氏はプーチン氏と中国の習近平(シー・チンピン)国会主席を、そろって敵に回すわけにもいかないはずだ』としたたかに計算しているのだ。これこそ外交戦術だ」と書いたが、金正恩氏ほど外交にたけた人物はいないと思う。
その金正恩氏としたたかさにおいて並ぶ人物が、ロシアのプーチン氏である。
プーチン氏は、一度は訪問要請を断った金正恩氏を、ロシア・ウラジオストクで歓待して、北朝鮮の肩を持つ姿勢を国際社会に示した。金正恩氏に助けを求めさせる形で、北朝鮮を利用しようとたくらんでいる。プーチン氏は状況の変化にうまく対応し、自らの立場を固めていく。金正恩氏と同様に、いやそれ以上にしたたかである。