プーチン大統領との初会談に臨んだ金正恩氏の狙い

北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長とロシアのプーチン大統領が4月25日、ロシア極東のウラジオストクで会談した。2人の会談は初めてだ。

露朝首脳会談は、2011年8月に金正恩氏の父親、金正日(キム・ジョンイル)総書記がロシアを訪れ、当時のメドベージェフ大統領と会談して以来、8年ぶりである。

金正恩氏がプーチン氏との会談に臨んだのは、制裁強化を堅持するアメリカへの牽制だろう。

2月末のベトナム・ハノイで行われた2回目の米朝首脳会談で、金正恩氏はトランプ大統領に制裁緩和を拒否されている。だが制裁緩和は、北朝鮮の体制存続に欠かせない。金正恩氏は、一刻も早い制裁緩和を切望している。

2019年4月25日、ウラジオストクでの首脳会談後に開かれた歓迎夕食会で、乾杯する北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長(左)とロシアのプーチン大統領(写真=AFP/時事通信フォト)

独裁体制を維持するには「制裁緩和」しかない

2016年以降に制裁が強化された結果、石炭をはじめとする鉱物資源と海産物の輸出がストップした。輸入では石油が制限された。工場の稼働率も落ち込んでいる。北朝鮮の経済は大きく傾き、いつ破綻してもおかしくない。裏を返せば、それだけ各国の制裁が効果を上げていることになる。

金正恩氏は、高級官僚たちに金品をばらまくことで求心力を保ってきたが、それにも限界がある。独裁体制を維持するには、制裁緩和を実現するしかないのだ。

露朝首脳会談を終えたプーチン氏は「北朝鮮の非核化には、北朝鮮の求める安全の保証が必要だ。国際社会がその保証を与えるべきだ」と述べた。このことから金正恩氏の狙いは見事に成功したといえる。

北朝鮮はこれまで非核化の条件として、アメリカが金一族の独裁体制の存続を認め、軍事的かつ政治的攻撃を行わないとの保証を求めてきた。そのうえで金正恩氏は段階的な非核化を主張してきた。

これに対し、トランプ氏は「完全で検証可能かつ不可逆的な非核化」を要求。その結果、2回目の米朝首脳会談は物別れに終わった。