中国と手を組んでアメリカに対抗したい

対北朝鮮制裁によってロシアと北朝鮮との貿易額は半減している。制裁が緩和されれば、確実にその貿易額がもとに戻る。それにパイプラインを使ってロシアの天然ガスを北朝鮮や韓国に自由に輸出することもできる。

ロシアは2014年にウクライナ領のクリミア半島を併合して以来、アメリカやヨーロッパの国々と対立し、中東や中国との関係を強めている。今年2月には、中距離核戦力(INF)全廃条約からの離脱も表明した。国連安全保障理事会の常任理事国としての存在も薄れてきている。

プーチン氏は北朝鮮に対する影響力を確保することで、欧米に対抗したいのだ。北朝鮮は重要な外交カードなのである。

プーチン氏は北京で開催された中国の巨大経済圏構想「一帯一路」をテーマにした国際協力フォーラム(4月25日~27日)に参加した。27日には北京で記者会見し、露朝首脳会談の結果を習近平氏に伝えて共有したことを明らかにした。これこそ中国と手を組んでアメリカに対抗しようとの意思の表れである。

「北朝鮮の非核化」で国際社会が二分される恐れ

プーチン氏とトランプ氏は5月3日、1時間以上の電話会談を行っている。会談でプーチン氏は北朝鮮の非核化について、「(段階的)非核化に対し、(段階的)制裁緩和が伴わなければならない」と語り、トランプ氏は「ロシアが北朝鮮に対する圧力を強める必要がある」と述べた。

北朝鮮の非核化へのプロセスに対する考え方自体が、ロシアとアメリカでは大きく食い違っているのだ。

北朝鮮の非核化を巡って国際社会が二分されるようとしている。一度に完全な非核化を実施するまで制裁を緩和しないとの方針を掲げるのが、日本(安倍晋三首相)とアメリカ(トランプ氏)、それに韓国(文在寅大統領)だ。

これに対し、北朝鮮(金正恩氏)は段階的に非核化を行い、それに伴った制裁緩和を段階的に求めようとしている。この北朝鮮の後ろ盾となっているのが、ロシアと中国である。

自国の利益を最重要視するのが、外交の基本である。だが、多くの国同士が集まれば、そこにはさまざまな利害関係と思惑が発生する。