最高裁が「埋め立て承認」の効力を復活させた
ここで辺野古移設をめぐる経緯を簡単に振り返ってみよう。
1995年の米兵による少女暴行事件を受けて、当時の橋本龍太郎首相と大田昌秀沖縄県知事が協議し、普天間飛行場の返還と沖縄の振興を進めることで合意した。これが出発点である。
しかし橋本首相は普天間飛行場を県内移設することでアメリカと合意し、大田知事はこれを拒否した。
2013年12月には仲井真弘多知事が辺野古の埋め立てを承認するも、翌年11月に辺野古移設反対の翁長雄志氏が知事に当選し、2015年10月に翁長知事が埋め立ての承認を取り消した。
ところが2016年12月、今度は最高裁が「埋め立て承認の取り消しは違法」とする判決を下し、「埋め立て承認」の効力が復活。その結果、2017年4月に政府が辺野古の護岸工事に着手した。
その後、2018年8月に翁長知事が死去。同年9月に翁長知事の後継として玉城氏が知事に初当選した。
こうした経緯を振り返るだけでも、政府と沖縄の間で何度もボタンの掛け違いがあったことが分かるだろう。この掛け違いをきれいに直す必要がある。
埋め立て費用は2405億円から2兆5500億円に
玉城氏は県民投票の結果をバネに、引き続き安倍政権と対決する方針だという。最大の武器は辺野古北側の「軟弱地盤」の問題だ。政府は大規模な地盤改良を実施する方向だが、それには工事の設計変更が必要で、玉城氏にその変更を申請して承認を受けなければならない。玉城氏はこの申請を承認しないとみられ、政府は何らかの法的対抗処置を取らざるを得ない。その場合、工事が大幅に遅れるのは間違いない。
しかも地盤の問題などから費用が当初の2405億円から2兆5500億円に跳ね上がるとの試算もある。すべて私たちの税金である。
このまま玉城氏が安倍政権と対立し続けると、日本の安全保障に大きな影を落とす。いがみ合ってばかりでは辺野古移設の問題は解決しない。なんとか歩み寄る方法を模索したい。国民みなが真剣に考えて知恵を絞るべきである。
「沖縄県民を含む国民の安全を損なう」はずるい
「移設を進めることができなければ、市街地に囲まれた普天間飛行場の危険性を取り除くことはできない。中国などの脅威から日本を守る、抑止力を保つことにも反する。沖縄県民を含む国民の安全を損なうことにつながる。投票結果は極めて残念である」
こう書くのは2月25日付の産経新聞の社説(主張)である。
普天間飛行場に比べれば、海を埋め立てて米軍のキャンプ・シュワブを増設する辺野古移設の基地は、ヘリや輸送機の飛行は海上が中心になるから格段と安全だろう。
しかし中国の脅威から日本を守るには辺野古でなくともいいはずだ。ましてや前述したように朝鮮半島の勢力図が変化しつつあるなか、中国の立ち位置も変わる。アメリカの対応も変わってくる。