7 コリン・パウエル
目的意識を植え付けよ
部下は、リーダーが自分たちをどのような目的でどこへつれてゆこうとしているのかを知る必要がある。組織が実現しようとしているものを表す言葉としては、ミッション、目標、戦略、ビジョンなどがよく使われる。いずれも有用ですばらしい言葉だが、私は、別の言葉を使ったほうがいいと思っている――「目的」だ。「目的意識」「目的は?」「目的にかなう」など、とてもよく使われる言葉だからだ。
目的とはビジョンの終着点である。ビジョンにエネルギーを注入し、力強く前進させるのが目的だ。目的は前向きで力がなければならないし、組織の大勢に資するものでなければならない。
リーダーは、一人ひとりの部下に自分と同じ目的意識を持たせる必要がある。目的はトップのリーダーを起点に、ダイナミックで情熱的なリーダーシップによって人から人へと広がり、組織全体に浸透していく。こうして、リーダーの総体的な目的とつながりがある形で、部下たちは組織の一員としての目的を持つことになる。
優れたリーダーはビジョンやミッション、目標を設定する。偉大なリーダーは、あらゆる階層の部下に刺激を与え、各自が目的を自分のものとして理解し、真剣に取り組むようにする。こまごました仕事の向こう側に自分たちの目的があると理解させるのだ。組織にとってだけでなく、望むらくは組織を超えた世界にとっても有益だと思われる目的、そのような目的のもとに全員が団結したとき、チームの勝利は約束されたようなものである。
8 井上和幸
丸投げにならない任せ方
部下の仕事まで背負い込み、本来やるべきマネジメント業務がおろそかになっている上司の姿をよく見かける。しかし「部下ができることなら、上司は自分でやらなくていい」はずだ。
ただし、仕事の“丸投げ”は避けたいところ。なぜなら、丸投げをした場合は期待値どおりのアウトプットが得られることが少ないからだ。そのあげく「何だこの仕事は!」と言って部下にキレたり、ストレスを感じたり。上司と部下の間に深い溝をつくることにもなりかねない。
部下に仕事を任せる際は、仕事の目的や意味を真っ先に伝えることが重要だ。そのうえで部下に仕事の進め方を考えさせて話し合えば、部下が作業工程や時間のボリュームについてどう考えているか見当がつく。問題がありそうならそこで軌道修正を促せばいい。
また当社の場合、部下が実際にある仕事の作業に取りかかれば、そのスケジュールが、全スタッフに公開されているグーグルカレンダーにどんどん入力されていく。それを見れば順調に進んでいるかどうかなどの状況把握も容易だ。このように「部下のスケジュールを把握する」ことは、マネジャーにとって最重要項目の1つ。部下をゲームの駒にたとえるのは適切でないかもしれないが、しかしそのような感覚で、すべての部下のスケジュールを俯瞰して見ながら、いつ、誰と誰に、どんな仕事を任せ、プロジェクトを完成させればいいかという最適解を導くことこそが、マネジャーの仕事だろう。