※本稿は、雑誌「プレジデント」(2018年6月18日号)の特集「聞く力入門」の記事を再編集したものです。
1989年に初来日したとき、日本は元気だった
米・スタンフォード大学の「ハッソ・プラットナー・デザイン研究所」(通称dスクール)。“デザイン思考”の授業が開かれるこの研究所で私は教鞭をとっています。私と協力者が編み出した「ライフデザイン」(人生設計)の講義は大学で1、2位を争う人気授業です。このたび、その授業の内容を記した本が和訳されました。
今、ライフデザインという本を日本で発売するのはちょうどいい時期だと思います。日本では、働き方が変わりつつあるからです。
私は1989年に初めて来日して以降、多いときは年3回ほど日本を訪れています。初来日したときの日本はとても元気でした。しかし、その後バブルが崩壊し、日本のサラリーマンは会社で出世するチャンスが減り、人生の見通しが悪くなりました。伝統的な終身雇用制度の会社も減少し、これまでモーレツに働いて会社に尽くしてきた人が、働く意味を問いはじめました。
ライフデザインが、日本に必要な理由
この本は自分の将来に漠然とした不安を抱いている若い人にとって最適でしょう。今の時期、日本の大学4年生は就職活動に励んでいますね。ヒエラルキー型の会社が多い日本では、会社で自分のやりたい仕事をすぐにするのは難しいでしょう。「総合職」では、自分が行きたい部署に行けるかわからないですし、日本ではどんな仕事に就かされても文句は言いづらいでしょう。
そもそもインターンが根付いていない日本ではその職が自分に本当に合っているのかどうか、なかなか学生には見えにくいでしょう。とはいえ、「石の上にも3年」という文化があることもわかります。だったら無理に仕事でライフデザインをしなくてもいいのです。プライベートですればいいのです。
私の教え子は、フェイスブックの社員だったり、コンサルタントだったり、さまざまですが、仕事以外では子どもたちのサッカーのコーチ、ロボットづくり、経営学の勉強といろいろなことをしています。たとえ仕事がつらくても、そうやってプライベートから人生を「意味あるもの」にしましょう。新入社員には仕事以外にやりがいを見つけてもらいたいです。