ダメ社員を解雇せよ、と人事部に申し出る
長谷川氏が武田の人事評価制度の改革とグローバル標準の報酬制度を志向していることが見てとれる。人事評価制度は昇給・昇進の核となるもので、曖昧でいいかげんな評価は社員のモチベーションを著しく低下させる。
入社以来、同じ釜の飯を食べてきた身内だけの年功的な風土では許されるかもしれないが、職責と成果のみで計るしかない外資系企業では公平・公正な評価は生命線でもある。
したがって外国人は人事評価に対しては極めて厳格だ。
外資系製薬会社の人事課長はこう指摘する。
「人事評価のランクは1~9まであるが、日本人上司は4~7の間に入れようとする。しかし、外国人上司はどういう成果を出したのかを細かくチェックし、個人の評価の違いを明確に出す。外国人の人事担当役員は日本人上司の評価分布を見て、こんなつけ方はありえない、なぜ2と3がいないのだ、もっと区別しろと厳しく言い、それができない上司は無能と見なされる」
前述のA氏の会社も同様だ。
「当社の評価のランクが1~5まであるが、1をつけられたら、即刻辞めてくださいという意味だ。2がつけばこのままでは危ないので、なんと真ん中の3にするために、上司が本人と話し合って改善するためのプログラムを提供することになる。それでもだめなら退職勧奨を受けることになる」(A氏)
外資系では売上げも含めた数字は厳しくチェックする。四半期ごとの売上げ、利益の達成度はもちろん、売上げにつながるためにどういう行動をとったのかについても細かく評価する。日本人のように平均的な評価をつけることはしない。
「もしだめな社員がいれば、外国人上司は、その社員を『クビにしてくれ』『どこかに飛ばしてくれ』と人事に激しく言ってくる。日本人の人事担当者の集まりで、やる気がない社員が多くて困っているという話を聞くが、うちではそんな社員はすぐに辞めさせるし、そうした悩みがない」(製薬会社人事課長)
外国人や外資系のプロ経営者が大胆な改革を実行し、会社が再生し、成長軌道に乗ることもあるだろう。
しかし、それが日本人社員にとって幸せにつながるとは限らない。A氏は「いきなり外国人上司が現れたとき、コミュニケーションを図るのは大変だ。上司との関係を円滑にするには上司が得意な英語を使いこなすようになることがまず一番だ。英語をやりたくなければ、早めに別の日本の会社を見つけて転職するほうが本人にとっても利口な選択肢」とアドバイスする。
英語力がなくても仕事ができる日本企業はたくさんある。とはいえ、出処進退の決断を迫られるときが訪れるかもしれない。