グローバルな異動で修羅場を経験させる

外国人社長を迎えた武田の人事制度がどう変わるのか今の段階ではわからない。だが、クリストフ・ウェバー社長はインタビューで「力を入れるのがリーダー人材の育成。異動で経験を積ませ、ベストプラクティスを共有する仕組みもつくる。武田の社員は優秀だが、勝利への強い意欲やオペレーションの機敏さがやや不十分な面もある。これを強化する」(『プレジデント』2014年9月1日号)と抱負を述べている。

グローバルな異動と配置によって“修羅場”経験させて鍛えるのは外資系が最も得意とするところだ。当然、それに見合った異動を可能にする人事・報酬制度の確立が必要になる。報酬の仕組みが国によって違っていては、世界の人材の異動が難しくなる。つまり、最も特殊と言われる日本の人事制度を改革し、グローバルで統一化・標準化する必要がある。

ウェバー氏を招いた同社の長谷川閑史CEOは政府の産業競争力会議の雇用・人材分科会の主査も務めている。解雇規制の緩和や話題のホワイトカラー・エグゼンプション(残業代ゼロ)の導入提言でも中心的役割を担っている。

その長谷川氏が雇用・人材部会の有識者ヒアリング(2013年11月5日)に招いた日産自動車の常務に対してこんな意見と質問を発していた。

<私がアメリカから帰って一番愕然としたのは、武田薬品の中でそういう評価制度は導入していたが、極めて目標の設定が抽象的、曖昧で、結果を入れても結局、良くやったかやっていないかは評価する人の感覚で決められるというシステムになっていた。(中略)うちで一番苦労していることの1つだが、グローバルな報酬をどうやって標準化されているのか。ルノーさんがパートナーなのでヨーロッパ的な部分に合わせているのか。我々としてはエグゼクティブからだんだんスタンダーダイズしていかなければいけないと思っている>(議事要旨より)