人事部の本音「60歳でみんな辞めてほしい」

2013年4月の改正高年齢者雇用安定法(高年法)の施行で希望者全員の65歳までの雇用確保が義務づけられた。

これをきっかけにサントリーホールディングスや大和ハウス工業、オリックスなどが定年を65歳に延長、あるいは大和証券グループのように70歳までの雇用を実施する企業がメディアで話題になっている。

しかし、こうした企業は例外にすぎない。大多数の企業では1年更新の契約社員、つまり、非正規での雇用なのである。ただし、非正規といっても高年法で雇用が守られているうえに給与も高い。

じつは、本当は60歳の定年でやめてほしいのに、雇用義務化によって仕方なく雇用されている社員が多いのも事実だ。精密機器販売会社の人事部長はこう語る。

「残って働いてほしい人は一言で言うと、労働力になる人。高度のスキルや知識・経験を持っているにこしたことはないが、培った技術や知識を後輩に伝授してほしいと思っています。じつは法律の改正前は、一定の基準を設けて、最低限教えることができる人に絞って雇用していたが、全員を雇わざるをえなくなった。基準が撤廃されたために、これから働く人がどんどん増える。新たに受け入れる職場もないので、正直言ってやってもらう仕事を確保にするのが大変です」

希望者全員を再雇用する法律改正には経団連をはじめ経済界は当初から反対していた。法制定前に実施したアンケート調査では「再雇用者の選別基準を設けるべき」という大企業が約96%も占めていたという経緯もある(日本生産性本部2013年1月調査)。

だが、60歳で職を失うと公的年金支給まで空白期間が生じるという政府が押し切ったのである。