65歳まで働ける人の「敬語」と「口数」
本当はA氏も65歳まで働きたかったのだが、同僚に対する会社のパワハラなどに嫌気がさして辞めたという。
「定年後も残ってほしい社員は、他社に就職されては困る技術系の人などごくわずかしかいません。ほとんどはいらない社員ばかりです」とA氏は言う。
ここまでひどい仕打ちをされては居づらくなるのも確かだ。しかも、本来なら会社に残れなかった人ほどつらい仕打ちをうけやすい。IT企業の人事課長はそういう人たちについてこう語る。
「法制定前は人事考課が2期連続でB+以上あり、かつ所属長の推薦がある人という条件をつけていました。中でも推薦を受けられない人というのは要するに協調性がなく、職場の和を乱す人。そんな人はごく一握りにすぎないが、トラブルを起こさないように所属長に監視させています」
現役時代の悪評は定年後もついて回る。ではどうすれば打ち消すことができるのか。金融業の人事経験者は生き延びる方法として、口数を少なくし、出しゃばらないことだと言う。
「若手が残業しているのに、定時に帰る場合は必ず『お先に失礼します』と言って席を立つこと。会議に参加しても決して自分から発言してはいけません。意見を求められたときに初めて答えるようにすることです。そのうち、周りも『あの人も変わったなあ』と思い始めるし、中には『ここが行き詰まっているのですが、どうしたらよいですか』と言って寄ってくる若手もいるかもしれません。とにかく周囲に好感を持たれるようにすることです」
元の部下に敬語を使うなど、何やら針のむしろに座らせられているような感じだ。こんな息苦しい環境だと辞める人が出るのは当然かもしれない。もちろん、会社によって環境は異なるのだろうが、現役時代と同じ感覚では務まらないのも事実かもしれない。