なぜ、61、62歳で辞める人が多いのか
ただし法律で守られているといっても65歳まで雇用が安泰というわけではない。
電機メーカーでは60歳を過ぎると、一担当者として元の職場で働くことになっている。だが、61~62歳の途中で辞める人もいる。同社の人事部長は、その理由の一つとして職場の人間関係を挙げる。
「元管理職だった人でも再雇用後に一兵卒になって働いてもらいます。でも、自分で何でも仕切りたがるクセが直らず後輩に疎まれる人もいます。やがて喫煙所あたりで『あの人は周りに迷惑をかけているのもわからない困った人だよ』と後輩のタメ口を聞かされることになる。結局、居場所がなくなって自ら辞めていく人もいます」
本来は一担当者として後輩の管理職をサポートする役割が期待されているのだが、つい昔の気分で後輩にぞんざいな口調で話をしたり、聞きたくもない自慢話をしたりする人もたまにいる。
自分ではよかれと思っていても周りには煙たがられる。管理職気分が抜けきらずに出しゃばってしまうという「職場との協調性」がないために自主退職を選ぶ人もいる。
企業の中には、必要のない高齢社員を積極的に追い出そうとしているところもある。食品会社の62歳の元社員のA氏はこう告白する。
「法改正を受けて、定年後も希望者全員を再雇用します、と会社は言っていたのですが、それは表向きの話でした。役員の気に入らない社員を集めて、工場に配置して商品の梱包作業のきつい仕事をやらせて自主的に辞めるように仕向けているのです。デスクワークをしている社員に対しても、若い部下のいる前で怒鳴りつけたり、露骨な嫌がらせをしたりして退職に追い込んでいるのが実態です」
この会社は元開発職や営業職の管理職を全国の工場にシルバー部隊として配属し、生産工程や商品の梱包作業などに従事させているという。未経験に加えて肉体的にもきついために、次の更新を機に辞めていく人も少なくないそうだ。まさに高齢者版の“追い出し部屋”である。