今年4月から改正労働契約法が施行される。目玉は、有期労働契約が繰り返し更新されて通算5年を超えた場合、無期労働契約に転換できる「5年ルール」だ。対象は、契約社員やパート、アルバイト、派遣、嘱託などの有期契約労働者(派遣社員は派遣元との労働契約が対象)。1年契約を繰り返して更新しているケースなら、5回目の更新後に無期転換の権利が発生する。契約期間中に労働者が申し込めば、契約期間終了後に無期労働契約に切り替わる。今年4月以降に結ばれた有期労働契約に適用されるため、5年ルールで無期転換する人が現れるのは2018年4月以降だ。
正社員として働きたくても働けなかった非正規労働者にとって、5年ルールは心強い味方だろう。ただ、ここにきて意外な問題が浮上している。5年ルールにより、企業が正社員を一生雇わなくてはいけなくなる可能性が指摘されているのだ。
これには今年4月から施行される改正高年齢者雇用安定法が関係している。改正法は、厚生年金の支給開始年齢引き上げにあわせ、60歳の定年後も希望者全員が原則的に65歳まで継続雇用される制度の導入を企業に義務づけている。これによって正社員は定年後も有期社員として働くことが可能になった。
じつは5年ルールは、再雇用の有期契約にも適用される。定年後に再雇用された有期社員が5年を超えて働けば、無期社員に返り咲くことができるのだ。
しかも復活社員は65歳以上なので、60歳定年制が適用されない。復活社員は、法律上は定年がない“終身社員”として、死ぬまで雇用される権利を手に入れることになる。
今回の改正の目的は、生活が不安定な非正規労働者を救うことにある。しかし、このままでは年金世代まで必要以上の保護を受けることになってしまう。