スマートフォンの個人データを抜き取るアプリの公開が後を絶たない。誰がどう考えても違法と思われるのだが、昨年12月末、こうしたアプリを公開したとして逮捕されたIT関連会社の社長ら男女5人を、東京地検は嫌疑不十分で不起訴処分とした。逮捕・取り調べに当たった警視庁の面目丸つぶれである。先般の遠隔操作ウイルスによる誤認逮捕事件の悪イメージを払拭できるチャンスのはずが、裏目に出てしまった。
なぜ不起訴になったのか。約9万人のスマホがウイルスに感染し、電話帳にある電話番号やメールアドレスなど1190万件以上の個人情報が流出したにもかかわらず、である。しかもネットの裏情報では、逮捕された関係者が運営する出会い系や4クリック詐欺サイトから、闇金グループに金が流れているという情報が寄せられていた。
スマホのアプリには、必ずパーミッション画面が現れる。インストール直前に「同意します」「同意しません」という表示が出るアレである。今回不起訴処分となった背景には、個人情報を収集することにユーザーが同意した点、かつそのアプリがユーザーに説明した通り動画を再生する機能を満たしていた点、この2点の理由があった模様だ。
しかし実際のところ、多くのユーザーがパーミッションの同意事項についてよく読むこともなく、甘い誘惑に駆られて同意を与えているのが現状である。個人情報保護法では、本人の同意なく第三者に個人情報を提供してはならない、と定められているが、それを逆手に取ったやり方といえるだろう。
今回の不起訴処分により、今年はこうした不正アプリの横行が予想される。法律が追いついていない以上、自分の身は自分で守るしかない。
従来の情報漏えいと比べて深刻なのはスマホが電話であり、その中のアドレス帳に友人や取引先など個人情報が入っている点である。漏えいすれば他人に迷惑をかけることになる。「通話無料」「電波改善」「バッテリー長持ち」などを謳う中に、危険なアプリが少なくない。いま一度、自分のスマホ内のアプリを見直すことをお勧めする。