欲しいのではなく捨てたい願望の表れ
今さらいうまでもないことだが、ネット通販は簡単で便利である。実際に店を巡らなくても、ウインドーショッピングができるし、クリックするだけでいろいろなモノが買える。ポイントサービスも充実しており、お得感も味わえる。画面上で「ようこそ」と迎えられ、「購入する」をクリックすると「ありがとうございました」と感謝され、後日、自宅で品物を受け取る。この一連の行為がクセになると、もはや本当にモノが欲しいのではなく、カチカチとクリックしたくてクリックするような事態に陥ってしまうのである。
そもそもネット通販は五感(視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚)の拒絶ともいえる。店員とのやりとりが煩わしい、あっちこっちに移動するのが億劫、品物を吟味するのが面倒くさいということから五感を無意識のうちにシャットダウンしているのだ。ある意味、ネット通販とは「買う」というより何かを「切り捨てる」行為。欲しいのではなく捨てたい。五感もお金も、しまいには夫も捨ててしまいたいという願望がそこには隠されているのである。
それを阻止するには五感の回復しかない。妻が五感を拒絶するのは夫の鈍感さにうんざりした結果でもあるので、我々は自ら率先して五感の起死回生を図るしかないのである。
そのためにはやはり、一緒に買い物に行くのが一番だろう。デパートなどに出かけて、買い物本来の喜びを取り戻す。「買い物は楽しい!」と思い出してもらうのである。その際、いやいやついていくというような態度は決して見せてはならない。楽しい気分を先導すべく五感をフルに働かせて買い物会話を弾ませるのである。例えば、妻が目に留めた商品について、すかさず「いい色だね」「試着してみたら」などと発言する。何かを食べたら「おいしいね」「また来ようね」という具合に、味はもちろんのこと次のショッピングをさりげなく誘うのだ。