外資出身経営者はまず社員を“選別”

外資出身経営者が人事制度で真っ先に手をつけるのが年功的な人事・給与制度の撤廃と「タレントマネジメント」と呼ぶ優秀な社員とそうでない社員を選別だ。

優秀と見なされた社員は報酬のアップとリーダー教育の機会が与えられ、そうでない社員は昇進の門戸が閉ざされ、リストラの憂き目にあう人も発生する。

日本の大手化学会社から日米の合弁会社に転籍し、その後、米国人社長が就任した際の人事劇を経験した営業職のA氏(50歳)はこう語る。

「日本法人に外国人が多数やってきました。私たちは戦々恐々としていましたが、最初の1年目は日本人と親しくつきあう。なんだ、いい人たちじゃないかと思っていたら、2年目にガラリと態度が変わった。じつは仕事ができる人間か、使えないやつなのかを見極めていた。2年目に外国人上司から『あなたに上司は必要ない』と言われる社員もいた。つまり、あなたをどこかの組織に異動させて使っていこうとは考えていないという意味です。人の処遇に関してはアメとムチを使い分ける。有能な人材であれば日本にとどまらず世界で活躍できるチャンスを与えますが、そうでない部下は容赦なく追い出されてしまいました」

A氏は英語ができたおかけで留まることができ、その後、アメリカ本社にも派遣された。今も生き延びているが「成果に対する外国人上司のプレッシャーが強く、気が抜けない」日々を送っている。

A氏が属するこの日本法人には米国人社長や外国人社員がやってくるとともに、人員削減も同時に実施され、さらに外部から30代の中途社員が多数採用された。給与制度も完全にアメリカ型の職務給ベースに変わった。もちろん、年功的昇進も完全に払拭されたという。