文の冒頭や最後に書く「お世話になります」や「よろしくお願いします」。日本人が慣れ親しんでいる便利な定型文だが、北九州市立大学准教授(応用言語学者)のアン・クレシーニさんは「とても英訳しづらく叫びたくなる日本語1位だ」という――。

※本稿は、アン・クレシーニ『世にも奇妙な日本語の謎』(フォレスト出版)の一部を再編集したものです。

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写真=iStock.com/Passatic
※写真はイメージです

「お世話になります」が便利すぎる件

いちばん英語に訳しにくい日本語は「よろしくお願いします」だとずっと思っていたけれど、最近、もしかしたら「お世話になります」かもしれない、と思うようになった。

日本語に山ほどある決まり文句のほとんどは訳しにくいが、「お世話になります」は「英語に訳しにくくて叫びたくなるランキング1位」だ(僭越せんえつながら、私が勝手に決めました)。

英語で「お世話になります」に悪戦苦闘

数カ月前、久しぶりに英語でメールを書いた。執筆や講演会はほとんど日本語で行っているけれど、年に1回だけ全米各地で講演会をしている。そのため、先方の事務の方とメールのやり取りが必須となる。

ただ、なかなかメールの書き出しが思いつかない。日本語のメールでは、よく「お世話になります」とか「いつもお世話になっております」などで始めるけど、英語ではどう書き始めるんだったっけ?

一応、私は英語のネイティブだ。でも、全然思い出せなかった。10分くらいパソコンのスクリーンをただ眺めるばかり。

Hi!
How are you doing?
I hope you are well.

「全部ダサいな。どうしよう……」

結局、何を書いたか覚えていないが、きっとおかしな英語だったはずだ。