トランプ政権、地政学リスク、中国人の日本移住…激動する世界情勢を展望すれば、日本が大復活するチャンスが見えてくる。

学校で飛び交う中国語PTA会長就任の事例も

近年、中国国内の政治・経済・社会状況の悪化を懸念する人々の間で、日本への移住を選ぶ中国人が増えている。企業家などのスーパーリッチやタワマンを購入できるアッパーミドル層に加え、中間層にまで「潤ルン(=脱出し海外移住することを指す隠語)」が広がっている。出稼ぎ目的で日本社会に溶け込んでいた従来の在日中国人とは異なり、潤の人々は日本に独自の社会を築き始めている。

投資移住コンサルティング会社ヘンリー&パートナーズは、昨年6月に公表したリポートで、2024年に国外へ流出した中国の富裕層(100万米ドル以上の投資可能資産保有者)は1万5200人と予測、富裕層の国外流出数で世界一となると見通した。これは前年の予測を上回る数字だった。

こうした新移民の目的の一つが、子どもに良質な教育を受けさせることだ。東京都内のインターナショナルスクール(以下インター校)では中国人家庭の子どもが目立つようになっており、「インター校を新設しても通うのはほぼ中国人」と言われるほどだ。運営にも中国出身者が関与している場合があり、東京の過熱ぶりを避けて、有名インター校の多い横浜や神戸へ移住する新移民も出てきた。

首都圏では中学受験率が上昇しているが、中国人家庭の参入も目立ってきた。例えば、進学塾のSAPIXでは、中国にルーツを持つ生徒が目立ち始めている。SAPIXに通わせる中国人保護者が非公式に立ち上げたグループチャットには煩雑な認証プロセスがあり、管理人には強い権限が与えられ、また一定期間発言がないと退会させられるなど本格的な情報交換の場となっている。昨年度まで子どもをSAPIXに通わせたある新移民は、「中学受験が終わるやいなや、すぐにグループ名が『2031年大学受験』に変わった」と証言する。教育への熱意は平均的な日本人とは桁違いだ。

有名私立中学・高校では中国にルーツを持つ生徒の比率が徐々に上昇中で、中国人保護者がPTAの幹部、ひいては会長に就任した例もあるほどだ。

東京・文京区の「3S1K」(誠之小学校、千駄木小学校、昭和小学校、窪町小学校の頭文字から取った言葉)が特に人気となっている。中国では同じ都市内でも区によって極端な教育格差があるため、居住エリアがものをいう。そんな背景のもとで、東京大学を擁し、文教エリアとして名高い同区が、移住先として羨望の的となっている。文京区の中国国籍住民は、上海ロックダウンを受けて脱出が本格化した22年の4792人から、3年で約80%増の8666人に達した。「3S1K」の一角に子どもを通わせるある中国人ママから、「学校で子どもが中国人の転入生と中国語ばかり話すようになり、日本語力が伸びないため引っ越すことにした」という声が上がるほど、集中が進んでいる。

日本人が関わらない独自の経済圏を確立

文京区の物件が高すぎて購入できない層は、さいたま市浦和区など、首都圏の他の文教エリアに注目するようになっている。また、東京に次ぐ移住先となっている大阪では、天王寺区の公立小学校が質がいいとして一部で話題になっている。

中国新移民の増加とともに、地下銀行の規模も拡大しているとみられる。日本で不動産を購入するには、中国からの送金が必要だが、中国側の正規手段による送金には厳しい制限があるため、非正規なルートによる資産移動が常態化している。これらのルートはマネーロンダリング(マネロン)と区別がつきにくく、懸念が高まっている。

中国人富裕層の来日に伴い、中国人が集まる「会所」(プライベートクラブ)も盛況となっている。上野のある会所では高級ウイスキーがずらりと並び、客の半分は中国人ビジネスオーナーで、1回あたりの平均利用額は8万〜10万円、時には100万円を超えることもあるという。こうした会所は都内各地に現れ始めており、港区にあるアメリカンクラブでも中国語での会話が聞かれるようになっている。「ガチ中華」よりも洗練された、「セレブ中華」とでも呼ぶべき中国発祥の高級レストランも赤坂や日本橋などの都心の一等地に登場している。こうした場は、接待や気心の知れた知人との集まりに最適なのだ。近年移住してきた中国人経営者を念頭に新たな経済団体を作ろうとする動きも浮上している。

移民や不動産の仲介も中国系企業がメインプレーヤーとなっている。中国版インスタグラム「小紅書(RedNote)」は中国国内外で使えることから、海外移住者およびその予定者にとって重要な情報交換ツールとなっている。仲介業者による情報発信も活発で、ダイレクトメッセージ(DM)を通じた問い合わせが相次いでいる。