たちの悪い相手をうまくかわす方法は何か。コミュニケーション・アドバイザーの森優子さんは「私が銀座ホステスとして働いていたとき、たちの悪いお客さまが発生することがあった。そんなとき私は、銀座のママから習った術として『困ったちゃん発生!』と心の中で緊急ボタンを押して、気持ちを母親モードに切り替えていた」という――。

※本稿は、森優子『敵をつくらないホンネの伝え方』(三笠書房)の一部を再編集したものです。

カクテル
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選んでもらうには、強すぎる言い方をしない方が上手くいく

「競争心や闘争心をむき出しにしないこと」

これは、本音を上手に伝えるための大きなコツだと言えます。

営業でも接客業でも、よい意味で負けたくない強さを秘めておくことは大事なことですが、「あなたにお願いしたい」と、お客さまから選んでもらうには、強過ぎる言い方をしない方が上手くいきます。

なぜなら、強引な営業方法だと相手に感じさせてしまうからです。

世の中に次々と強力な求人サイトが現れ、競合他社との営業最前線の中で自社を選んでもらうことは、営業マンにとっては毎日が闘いのようであり、相当のプレッシャーがありました。

「リクルートさんにはもう少し安いプランはないの? 実は他社からも色々話を聞いているんだよね」という言葉を、何度お客さまから聞かされたことでしょう。

例えばそんなとき、「弊社は少し高いかもしれませんが、お客さまの満足度は他社よりかなり高いです」「いい人が登録しているのでまずはやってみることをおすすめします」とアプローチするのと、「他社さまからもお話を聞いていらっしゃるのですね。御社にとって最善の方法で結果に繋がることを望んでおりますので、じっくりご検討していただければと思います」と、オブラートに包んだ言い方で答えるのとでは、どちらが強引に感じるでしょうか? 答えは言うまでもありませんね。

もちろん後者のように答えるには、本心からお客さまに寄り添う気持ちを持たなくてはなりません。「それならどうぞ他社でやってみてください」のようなトゲのある言い方では、競争心がむき出しです。

決めるのはお客さまです。そのように言いたくなっても、その本音をいったんお客さまファーストというオブラートに包みましょう。すると、お客さまの心にオブラートが溶けていき、あなたの本音という薬がじわじわと効いてくるのです。